研究概要 |
武器貿易条約(Arms Trade Treaty:ATT)は、2012年12月6日、賛成169,反対1(北朝鮮)、棄権14(ブラジル、中国、エクアドル、エジプト、印、イラン、イスラエル、モーリシャス、ミャンマー、パキスタン、露、シリア、ウガンダ、ジンバブエ)の圧倒的賛成多数で採択された。2013年6月3日日本も、本条約に署名した。本研究の対象となる、海洋法上の側面については、国際法上の無害通航権を害しない形での条文が成立した。すなわち、以前の草案段階では、「通過と(船舶間)積替(Transit and Transshipment)」として、「いかなる当事国も、必要かつ可能な範囲で、自国の領域を通って通過または船舶間積み替えをする、本条約の適用を受ける通常兵器を規制するための、立法、行政その他の措置をとる。(筆者仮訳)」(第9条第1項)との条項を有していた。これに対して、条約では、同じ表題の下、「いかなる当事国も、必要かつ可能な範囲で、関連の国際法に従って、自国の領域を通って通過または船舶間積み替えをする、第2条1項の適用を受ける通常兵器を規制するための適当な措置をとる (Each State Party shall take appropriate measures to regulate, where necessary and feasible, the transit or trans-shipment under its jurisdiction of conventional arms covered under Article 2 (1) through its territory in accordance with relevant international law.)(筆者仮訳)」 (第9条)となった。このため、「関連の国際法に従って(in accordance with relevant international law)」 という、最後の修文により、従前の無害通航権は阻害されないことが確保されたと、一応は理解される。この背景には、日本も含めて、海洋先進国の主張を米国も認めたものと伝えられている。
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