研究課題/領域番号 |
25590035
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
福田 州平 大阪大学, グローバルコラボレーションセンター, 特任研究員 (50434585)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 国際文化学 / 万国博覧会史 / フィラデルフィア |
研究実績の概要 |
本年度は、1876年開催のフィラデルフィア万博について、日本と中国の展示物に関する評価のディスコースおよび本館のレイアウトについて、先行研究の批判的検討および史料に基づいた分析を行った。そして、次のような成果を得た。 まず、フィラデルフィア万博は、当時「半開」イメージがあったアメリカが、西欧に匹敵する国家であるとの国際的認証を獲得し、かつアメリカという国家のアイデンティティを確認するためのイベントだった。このイベントには、海外から36か国が参加した。この外国の参加は、アメリカに「世界のパノラマ的光景を与えた」とも指摘されている。そして、参加国の中には、日本と中国がいた。 日本と中国の展示物は、比較され、対照的な評価を得た。日本の展示物を中国のそれに比して、優れているとするディスコースが存在していた。しかし、褒賞獲得数の割合などから分析すると、そのようなディスコースは必ずしも正当なものとは言い切れない。当時、アメリカでは「中国人問題」が存在し、おそらくそれが評価に影響を及ぼしたのではないかと思われる。 もっとも、日中両国の出品物が多く展示された本館では、「人種によるインスタレーション」が採用が試みられた。そのインスタレーションは、実務的な都合により、貫徹されなかったものの、ある程度実現している。そこで示されようとされていたのは、アメリカが描く国際秩序だった。そして、その背後には、さらに人種主義のイデオロギーが存在していた。この中では、日本も中国も同列に扱われ、アングロ・サクソンに従属する存在として位置づけられていた。 つまり、日本は、一方では「進歩」した国として、他方では人種的に劣位の国として位置づけられる二重の存在だった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の成果において、アメリカのフィラデルフィア万博開催の意図を明らかにすることができた。また、展示物のアメリカでの評価および本館のインスタレーション分析を通じて、現地での「日本」と「中国」のイメージを明らかにすることができた。したがって、おおむね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、本研究の最終年度にあたる。そこで、フィラデルフィア万博のシンボルともいえる巨大な蒸気機関「コーリス・エンジン」が展示された機械館の分析を進めるとともに、本研究の取りまとめを行う。 まず、フィラデルフィア万博における主要パビリオンの一つである機械館の分析に取り組む。フィラデルフィア万博は、アメリカが欧州に匹敵する国家であることを示すために行われたという側面があり、その目的を果たすのに大いに貢献したのが機械館の展示物の数々だったと思われる。つまり、科学技術力・工業力といった「ソフト・パワー」が機械館によって示されたと考えられる。この点について、追加史料の収集なども行いつつ、分析をすすめていきたい。また、本研究の観点からいえば、日本と中国が機械館をどのように見たのかも重要であり、これについても取り組んでいく。 また、最終年度にあたって、3年間の研究成果を、米中日の国際文化関係の観点から取りまとめていく。
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