これまでの調査・研究から、フィラデルフィア万博の主要パビリオンの中でも、機械館におけるアメリカの機械類の展示が、本研究テーマにおいて、重要な役割を占めたことがが明らかになってきた。そこで、最終年度は、機械館に絞って研究を推進した。具体的には、次のように研究を進めた。 機械館では、当時の工業先進国がそれぞれ展示を行ったが、アメリカの展示スペースが同館の4分の3を占めた。また、アメリカの展示物のなかでも、コーリス・エンジンは、さまざまな人を驚嘆させた。コーリス・エンジンは、いわば、フィラデルフィア万博の目玉であり、当時のアメリカの工業力を示すものだった。これは、アメリカの世界的地位向上の一助ともなり、フィラデルフィア万博は、対外的な「メディア」として十分に機能した。そして、その「メディア」は、当時の先進国であるイギリスやフランス、あるいはドイツといった国々だけでなく、日本にも影響を与えたのである。 研究期間全体の研究は、まず、アメリカの経済力の向上と、当時の先進国がもっていたアメリカの「イメージ」の転換という観点から、フィラデルフィア万博の開催目的を分析したうえで、同万博における日本と中国の展示の分析を行った。分析は、アメリカにおいて、日本と中国の展示物がどのように評価されたのかについて、アメリカが思い描いていた世界秩序像と人種イデオロギー的な背景を踏まえて、出版物や本館の配置図などの詳細な考察を行った。こうした研究を行った上で、上述の対外的メディアとして捉える研究を行った。 研究期間中、残念ながら、フィラデルフィア万博が中国に及ぼした影響について、十分な考察を行うことができなかった。しかしながら、主要な史料については収集を終えており、今後も研究を進める所存である。
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