ハンガリーの体制転換とその国際環境に関して、初年度(平成25年度)には、ハンガリー社会主義労働者党書記長カーダールの退陣に至るまでのソ連・ハンガリーの二国間関係を論じた。とくに、1985年のソ連共産党書記長ゴルバチョフ登場後に東側陣営の内部で生じた変化が、ハンガリー国内の政治状況に及ぼした影響について詳しく検証した。 次年度(平成26年度)には、1989年にハンガリーが西ドイツへの亡命を求めて自国に大量流入した東ドイツ市民に対してオーストリア国境の開放に踏み切った過程を東ドイツとの交渉を中心に分析した。そして、ハンガリーの国境開放が当時の東側陣営内部のパワーバランスを変化させて、陣営そのものの解体に重要な役割を果たしたことを論じた。 さらに、最終年度(平成27年度)には、1980年代後半以降のハンガリー・ルーマニア関係を分析した。とくに、農村改造を進めるチャウシェスク政権下のルーマニアから難民となって自国に流入したハンガリー系少数民族へのハンガリーの対応が、対外政策ばかりでなく体制転換期そのものにも影響を及ぼしたことを論じた。 3か年の研究を進めていく過程で、研究の目的である体制転換期のハンガリーを取りまく国際環境について、初年度の研究段階で重視したソ連・東欧の指導者間の関係のみならず、ルーマニアからの難民、西ドイツ亡命を求めて殺到した東ドイツ市民など、国境を越えたヒトの移動の重要性への理解も深めることができた。
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