最終年度となる2014年度は、①阿嘉島での日米交渉にかかわった元守備隊兵士、沖縄の住民、地元メディアへのインタビューを行う②これまでに撮影した映像資料を使ってドキュメンタリー作品を制作する③映像を国内外の一般市民、学生たちに見せ、この史実をどう受け止めるかを聞き取るーの3項目を研究の目的として行った。 元兵士へのインタビューは座間味島の守備隊長だった梅澤裕氏(兵庫県)、阿嘉島の守備隊兵士だった柴田収二氏(岡山県)の2人が応じてくださった。梅澤氏は浜辺で行われた「日米交渉」の仲介役を務めた人物で、極めて貴重な証言をいただいた。柴田氏は通信兵として通信機器管理を担当しており、当時の守備隊が外部から途絶されていた状況などを詳しく語ってくださった。 沖縄県民や阿嘉島の島民、さらに地元メディアへの聞き取り調査では、この日米交渉の史実をどう受け止めるか、といった点について、深く掘り下げることができた。多くの方たちが快く取材に応じ、映像を撮らせてくださったが、一部の地元新聞社には撮影を拒否され、この史実の背後にある微妙な問題を垣間見た思いだった。 映像資料は本学の学生たちの協力を得て撮影、編集を行い、ドキュメンタリー作品「銃を置いた兵士たち~消えて行く沖縄戦秘話」(17分)にまとめた。作品は幸い、高い評価をいただき、「地方の時代」映像祭(2014年11月、大阪府)では学生部門で最高位の優秀賞をいただいた。また東京ビデオフェスティバル(同、東京都)でも佳作に選ばれた。 計画では、ドキュメンタリー作品を国内外の複数の学校で上映し、反響をまとめる予定だったが、予算が逼迫し、同交渉の通訳官の1人の出身地である、ハワイ・カウアイ島のコミュニティーカレッジでの上映・講演会のみとなった。しかし同カレッジでの関心は非常に高く、学生のほか地元在住の日系人も多数訪れてくださり、極めて有意義な講演となった。
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