研究課題/領域番号 |
25590045
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
芹澤 成弘 大阪大学, 社会経済研究所, 教授 (90252717)
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研究分担者 |
柴田 章久 京都大学, 経済研究所, 教授 (00216003)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 統計調査 / インパクト・ファクター / Article Influence Score / 学術誌 / 研究評価 |
研究概要 |
東京大学、一橋大学、京都大学、大阪大学、神戸大学の5大学の経済・社会科学系の附置研究所と経済学研究科の研究業績データ(国際学術誌への論文掲載数や被引用回数等)を作成した。学術誌のリストとして、TOP20、TOP50、TOP100、TOP200を、トムソン・ロイターが公表している過去6年間(2007-2012年)のArticle Influence Scoreをもとに作成した。このリストの学術誌への論文掲載数を、個人ホームページ、大学ホームページ、Econlit、SSCI (Social Science Citation Index、トムソン・ロイター)から、データを収集した。それを、各大学の各部局(附置研究所、経済学研究科)ごとに、過去5年(2009-2013)、過去10年(2004-2013)、過去20年(1994-2013)の総論文数、教員一人当たり論文数、教員中位値を計算した。被引用回数についてはSSCIを用いて、各大学の各部局ごとに教員一人当たり論文数と教員中位値を計算した。 今年度の業績比較作業の結果の中で、5大学の附置研究所の研究業績データを「大阪大学社会経済研究所活動報告2013」(p18-23)に「経済・社会科学系附置研究所の研究業績比較(2013年)」として掲載し、インターネットで公開した。また、日本の経済学界で中心的に編集されている学術誌(Japanese Economic Review, Japan and World Economy, Journal of the Japanese and International Economies)と海外の学術誌と比較するデータを、日本経済学会2013年度秋季大会の「パネル討論 I:日本の経済学術誌の将来性-編集長の視点-」の中で発表した。その内容は「現代経済学の潮流2014」(東洋経済)に掲載される予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的として、次の4項目がある。1) インパクト・ファクターとAISの利点・欠点の分析を進める。2) 学術誌評価指標として解釈可能なインパクト・ファクターやAIS以外の統計量の研究も行う。3) AISを日本の経済学研究データに適用して、日本の経済学研究の生産性を分析する。4) AIS以外の学術誌評価指標により日本の経済学研究の生産性を分析し、3) の結果と比較する。 このうち、今年度は主に項目3) を行った。経済学研究科はその大学の附置研究所よりも規模が大きいので、経済学研究科の研究業績データの作成には時間・労力がかかる。これを考慮し、当初計画では東京大学、一橋大学、京都大学、大阪大学、神戸大学の5大学の経済・社会科学系の附置研究所のみのデータを作成する予定であった。しかし、次年度以降の研究計画に余裕を持てるように、努力して今年度に5大学の経済学研究科のデータも作成した。 また、日本の経済学界で中心的に編集されている学術誌(Japanese Economic Review, Japan and World Economy, Journal of the Japanese and International Economies)と海外の学術誌と比較するデータを、日本経済学会2013年度秋季大会の「パネル討論 I:日本の経済学術誌の将来性-編集長の視点-」の中で発表し、日本の経済学界にも本研究の成果の一部を還元できた。 以上のように、研究計画は順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度には、東京大学、一橋大学、京都大学、大阪大学、神戸大学の5大学の経済・社会科学系の附置研究所と経済学研究科の研究業績データ(国際学術誌への論文掲載数や被引用回数等)を作成した。大学や部局により、規模や所属研究者の研究分野も異なる。そのような違いを考慮して、5大学の経済・社会科学系の附置研究所と経済学研究科の研究の生産性を分析し、Discussion Paperとして公開する。 平成25年度の計算・比較分析結果を考慮しながら、学術誌インパクト数の理論的分析を開始する。インパクト・ファクターやAISといった学術誌インパクト数は、学術誌間の引用行列と公刊論文数に基づいて計算される。したがって、インパクト数の計算方法は、学術誌間の引用行列と公刊論文数を変数とする関数として定義される。このように定義された学術誌インパク卜数について、社会選択論の分析手法を用いて、以下のような理論的研究を行う。 1) 望ましい性質の公理化 学術研究の生産性を評価するために、学術誌インパクト数の計算方法の望ましい性質を考え、それを公理として定式化する。例えば、単調性、名称中立性、規模中立性、引用操作不可能性、分割操作不可能性など。 2) 公理的分析 インパク卜数として今まで提案された統計量(インパクト・ファクター、AIS、The Liebowit-Palmer Method、The Invariant Methodなど)や、独自に考案した統計量の計算方法が、上記1) で公理として定式化された望ましい性質を満たすかどうかを数理的に分析する。さらに、望ましい性質を満たす統計量の計算方法のクラスを特定化する。すなわち、計算方法のいくつかの性質を所与として、それらの性質を満たすのは特定の計算方法、また、特定の計算方法のクラスだけであることを、数理的論理を用いて証明する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究成果について、多くの研究者から関心が寄せられている。例えば、経済学の学術誌について討論する企画である「パネル討論 I:日本の経済学術誌の将来性-編集長の視点-」(日本経済学会2013年度秋季大会)への参加も求められた。さらに、本研究成果を海外に発信する必要性も指摘されている。 そのためには、本研究成果を英訳する必要性がある。本件の成果の一部(東京大学、一橋大学、京都大学、大阪大学、神戸大学の5大学の経済・社会科学系の附置研究所と経済学研究科の研究業績データ)をまず来年度に取りまとめる予定である。それを来年度に英訳の外部委託費用を捻出するために、今年度の予算の内、175,001円を来年度に残すことにした。 今年度の予算から来年度に残す175,001円を、5大学(東京大学、一橋大学、京都大学、大阪大学、神戸大学)の経済・社会科学系の附置研究所と経済学研究科の研究業績データを取りまとめた文章を英訳する費用の一部として支出する予定である。
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