平成27年度は平成25年度に行った「先制攻撃ゲーム実験」の論文の仕上げ、投稿、改訂作業を行った。先制攻撃ゲームは、政治学で戦争の原因の一つと扱われてきた先制攻撃という現象に注目し、これを一種の経済ゲームの形にしたものである。参加者が二人一組になり、実験者から元手(本研究では500円)を与えられて実験開始となる。参加者は30秒の制限時間以内にPC画面上に表示される赤いボタンを押すか否かを決定する。ボタンを押したほうは元手から100円が減額され、押されたほうは400円が減額される。結果は30秒後に開示されるが、ボタンは早押しで決まるため「お互いに押した」という結果は存在しない。お互いに押さなければ元手の金額がそのまま実験報酬となる。本研究ではプレーヤーのタイプを個人と3人1組の集団に分け、個人対個人、集団対個人、集団対集団の実験を行った。個人対個人の攻撃率、集団対集団の攻撃率、集団対個人の個人の攻撃率はほぼ4割であったのに対し、集団対個人の集団の攻撃率は7割を超えたという結果を得た。さらに先制攻撃ゲームの理論的検証を行い、当ゲームが危険優位な均衡と利得優位な均衡が異なるコーディネーションゲームになることを明らかにしている。この論文は現在、PLOS ONE誌から改訂要求が来ている。この論文は高知工科大学の三船恒裕氏(社会心理学)、肥前洋一氏(政治学)、上條良夫氏(経済学)との共同研究であり、異分野の研究者が集まって一つの論文としてまとめることができたことは非常に意義深いものである。 本研究課題では集団内でどのような交渉が行われ、その結果として発生する集団の行動が持つ特徴を明らかにすることができた。集団内で交渉させた実験に関する論文として、上記の論文以外にも、Applied Economics Lettersに掲載された論文がある。
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