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2013 年度 実施状況報告書

非対称コーディネーション問題における認知プロセスの神経経済学的研究

研究課題

研究課題/領域番号 25590048
研究種目

挑戦的萌芽研究

研究機関公立はこだて未来大学

研究代表者

川越 敏司  公立はこだて未来大学, システム情報科学部, 教授 (80272277)

研究分担者 佐藤 直行  公立はこだて未来大学, システム情報科学部, 准教授 (70312668)
瀧澤 弘和  中央大学, 経済学部, 教授 (80297720)
研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2015-03-31
キーワードゲーム理論 / 実験経済学 / 神経経済学 / コーディネーション
研究概要

本年度はまず、課題であるシェリングの非対称コーディネーション・ゲームのモデル化を行い、実験室実験を実施した。実験では、3人のプレーヤーにアルファベットA, B, Cのラベルを振った場合と、無意味な記号$, #, *のラベルを振った場合とを実施し、それぞれの場合において均衡が達成される比率を比較した。
実験課題は、ABC, ACB, BAC,...といったそれぞれのプレーヤーのラベルの順列の中から1つを選び、全員が一致した時のみ利得が発生するというもので、この際、全員一致した順列の先頭文字に当たるプレーヤーから順に高い利得になるという非対称性がある。
実験仮説では、アルファベット課題の場合にはアルファベット順の順列ABCが自然な焦点(フォーカル・ポイント)になると考えられるので、それに向かってプレーヤー間のコーディネーションが進むが、無意味記号課題の場合には自明な焦点がないため、コーディネーションは達成されずらいと考えた。また、アルファベット課題で選ばれると予想される順列ではCが最後尾なので低い利得となるため、プレーヤーCにはこの均衡をプレーする際に大きな葛藤が生じるものと予想された。
実験結果によれば、アルファベット課題では予想通り、順列ABCに向かって素早くコーディネーションが行われた。またその際、プレーヤーCが最もその順列を選択を選択する比率が低いことも分かった。無意味記号課題ではなかなかコーディネーションが達成されなかったが、8回繰り返しの後半では均衡への収束が見られた。
この実験結果をもとに被験者の行動を強化学習モデルで推定を行った。現在、この推定モデルを、アイカメラおよび脳波計とを用いて被験者の認知過程を調べるための実験装置に組み入れる作業を行っている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究課題であるシェリングの非対称コーディネーション・ゲームについて、実験室実験を実施し、その結果がおおむね実験仮説通りであったことから、研究が順調に進んでいると判断している。
また、ここからさらに進んで、被験者にアイカメラおよび脳波計を装着してもらい、この実験課題遂行中の被験者の認知プロセスを解明する神経経済学の課題についても、基本となるシステムの開発は終了している。具体的には、アイカメラおよび脳波計を連動させて測定する機器およびそのコントロール・システムは開発が終了している。
現在、実験室実験における被験者行動を強化学習によってモデル化し、それを上記のシステムに組み入れる。これにより、他のプレーヤーの行動をコントロールしつつ、注目したいプレーヤーの行動に焦点を当てて調べていくことができる。次年度はこのシステムを用いて、神経経済学的実験を実施する予定である。
このように、ほぼ研究計画通りに研究が進められている。

今後の研究の推進方策

本年度は、本研究課題であるシェリングの非対称コーディネーション・ゲームについて、実験室実験のデータをもとに、強化学習によるモデル化を行っている。次年度は、それをアイカメラおよび脳波計を連動させて測定するシステムに組み入れ、それをもとに神経経済学的実験を実施する予定である。
この実験ではまず、アルファベット課題において、順列ABCでコーディネートすることに一番強い葛藤をもつと予想されるプレーヤーCの認知プロセスを詳細に把握することが課題である。
次に、自明な焦点をもたない無意味記号課題において、プレーヤーたちが何に着目して互いの行動を調整しているのか、その認知的基盤を解明する。
こうした神経経済学的実験を通じて、コーディネーション問題および均衡選択理論について、有益な知見を得ることを次年度の目標としている。

次年度の研究費の使用計画

2013年度に予定していた通りにシェリングの非対称的なコーディネーション・ゲームの実験を行ったが、計画していたよりも募集できた被験者の数が若干少なくなってしまったため残額が発生した。
次年度使用額は、昨年度に執筆した論文"An experimental study of Schelling's Asymmetric coordination game"の国内外での発表のための旅費に充当する予定である。

  • 研究成果

    (17件)

すべて 2014 2013

すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 1件) 図書 (2件)

  • [雑誌論文] Guilt Aversion Revisited: An Experimental Test of a New Model2014

    • 著者名/発表者名
      Toshiji Kawagoe, Yuusuke Narita
    • 雑誌名

      Journal of Economic Behavior and Organization

      巻: 102 ページ: 1-9

    • DOI

      10.1016/j.jebo.2014.02.020

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 実証実験が示す合理的期待への疑問2013

    • 著者名/発表者名
      川越敏司
    • 雑誌名

      週刊エコノミスト

      巻: 2013年9月10日号 ページ: 28-31

  • [雑誌論文] 実験経済学 経済理論を検証・改善するのに不可欠のツール2013

    • 著者名/発表者名
      川越敏司
    • 雑誌名

      週刊エコノミスト

      巻: 臨時増刊号『経済学のチカラ』 ページ: 82-83

  • [雑誌論文] マクロ経済学の変化の原動力となった「期待」2013

    • 著者名/発表者名
      瀧澤弘和
    • 雑誌名

      週刊エコノミスト

      巻: 2013年9月10日号 ページ: 34-36

  • [雑誌論文] モデル科学としての経済学-J.S.ミルの経済学方法論から考える-2013

    • 著者名/発表者名
      瀧澤弘和
    • 雑誌名

      塩沢由典・有賀裕二編著『経済学を再建する-進化経済学と古典派価値論-』中央大学出版部

      巻: 1 ページ: 351-382

  • [雑誌論文] 20世紀の人間科学・社会科学を再考する--ジョセフ・ヒース『ルールに従う』を訳して2013

    • 著者名/発表者名
      瀧澤弘和
    • 雑誌名

      中央大学Chuo Online

      巻: 1 ページ: 1-4

  • [雑誌論文] Fast entrainment of human electroencephalogram to a theta-band photic flicker during successful memory encoding.2013

    • 著者名/発表者名
      Naoyuki Sato
    • 雑誌名

      Front Hum Neurosci.

      巻: 7 ページ: 208-208

    • DOI

      doi: 10.3389/fnhum.2013.00208

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Electroencephalogram dynamics during social communication among multiple persons2013

    • 著者名/発表者名
      Naoyuki Sato, T. Sato, T. Okazaki, M. Takami
    • 雑誌名

      Lecture Notes in Computer Science

      巻: vol.8226, part I ページ: 145-152

    • 査読あり
  • [学会発表] An experimental study of Schelling's asymmetric coordination game2014

    • 著者名/発表者名
      Hirokazu Takizawa
    • 学会等名
      6th International Nonlinear Science Conference 2014
    • 発表場所
      Radboud University, Nijmegen, オランダ
    • 年月日
      20140320-20140322
  • [学会発表] 経済学的人間像はどのように変わるのか2014

    • 著者名/発表者名
      瀧澤弘和
    • 学会等名
      日本感情心理学会 第7回セミナー
    • 発表場所
      名古屋大学
    • 年月日
      20140308-20140308
  • [学会発表] Equilibrium Refinement vs. Level-k Analysis: An Experimental Study of Cheap-talk Games with Private Information2014

    • 著者名/発表者名
      川越敏司
    • 学会等名
      「行動経済学・行動ファイナンスの発展」シンポジウム
    • 発表場所
      大阪大学中之島センター
    • 年月日
      20140214-20140214
  • [学会発表] PICSY経済,言語の重要性2013

    • 著者名/発表者名
      瀧澤弘和
    • 学会等名
      第36回VCASIセミナー: 鈴木健『なめらかな社会とその敵』論評会
    • 発表場所
      東京財団
    • 年月日
      20130909-20130909
  • [学会発表] モデル科学としての経済学2013

    • 著者名/発表者名
      瀧澤弘和
    • 学会等名
      中央大学企業研究所公開研究会
    • 発表場所
      中央大学
    • 年月日
      20130627-20130627
  • [学会発表] 経済学に脳と心は必要か?2013

    • 著者名/発表者名
      川越敏司
    • 学会等名
      大阪大学経済学会講演会
    • 発表場所
      大阪大学
    • 年月日
      20130624-20130624
    • 招待講演
  • [学会発表] Global Games and Ambiguous Information: An Experimental Study2013

    • 著者名/発表者名
      川越敏司
    • 学会等名
      大阪大学経済学部・待兼山セミナー
    • 発表場所
      大阪大学
    • 年月日
      20130624-20130624
  • [図書] 経済学に脳と心は必要か?2013

    • 著者名/発表者名
      川越敏司・瀧澤弘和・他6名
    • 総ページ数
      212
    • 出版者
      河出書房新社
  • [図書] 現代経済学のエッセンス 初歩から最新理論まで2013

    • 著者名/発表者名
      川越敏司
    • 総ページ数
      241
    • 出版者
      河出書房新社

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公開日: 2015-05-28  

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