研究課題/領域番号 |
25590051
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
金澤 雄一郎 筑波大学, システム情報系, 教授 (50233854)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | Bayesian estimation / Markov-switching / almost ideal demand / Japanese meat market / multi-move sampler / Hamilton filter / Bayes factor / generalized BIC |
研究概要 |
市場における企業のプライス・コスト・マージンは、その需要の価格弾力性の逆数となる。需要の価格弾力性を推定するために必要となる需要関数の推定モデルとして現在最も受け入れられているモデルが、Deaton and Muellbauer (1980) の AIDS モデルと言ってよい。本年度は1) Allais and Nichele (2007) による複数のレジームからなる需要関数推定モデルであるMarkov-Switching AIDS モデルにおけるベイズ推定方法を確立することにより、この重要な分野の新たな解析手法を提供することを目的とする。 本研究のもつ斬新なアイディアとチャレンジ性は、以下の研究計画で(9)式の各部分を計算してゆく際にレジームを表す離散潜在変数s1, s2, . . . , sT を生成するところにある。具体的にはCarter and Kohn (1994)、Chib (1996) などのmulti-move sampler を用いてこれらのマルコフ性をもつ潜在変数の結合分布をあらわし、ベイズ定理を用いて逆マルコフ性(将来から現在に向かったマルコフ性)を導出しMS-AIDS モデルに対するベイズ的な解析手法を提供する際に、本質的にベイズ定理を用いる点、およびHamilton filter を本質的に利用している点が斬新な着想や方法論の提案を行うものとなっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
Estimating the Markov-switching almost ideal demand systems: a Bayesian approachというタイトルで2012年のImpact Factorが0.614であるEmpirical Economicsという雑誌に出版が決まっており、DOI10.1007/s00181-013-0777-3, Print ISSN 0377-7332, Online ISSN 1435-8921が割り当てられている。また非線形のMarkov-switching AIDS modelにおけるモデル選択規準の確立のための第一歩としてVariable Selection in a Bayesian Linear Regression Model via Generalized Bayesian Information Criterionを筑波大学社会工学域Discussion Paper Series No.1316に発表した。
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今後の研究の推進方策 |
製品数N=4、レジーム数K=2、観測時点の数がT=800 で、ちょうど半分の時点でswitching が起きるという食肉市場を念頭に、どちらのレジームにも400 時点のデータが割り当てられるとし、これら4 製品の価格と支出を一様分布から生成させ、Gibbs sampler によって推定を行うとしよう。最初の40,000 はburn-in として捨て、次の40,000 標本を推定し、標準的なGeweke (1992) の収束診断法を用いて、各レジームについて計36 個のパラメータと推移確率2個を推定しようとすると、最尤法では数日の計算時間がかかる。また実験段階ではあるが、ベイズ推定法を用いた場合でも、3 時間~一日の計算時間がかかることもわかっている。差別化がされた製品の市場に拡張しようとした場合、製品数が10 から20 という場合もまれではない。たとえばバター6 社マーガリン6 社でバター・マーガリン市場を形成している場合などが考えられる。このような場合にも対応できるように、このアルゴリズムを改善してより高速な計算が可能にすることが実用上重要になる。 MS-AIDSモデルのレジーム数やパラメータ数の最も適切な数を候補となる複数のモデルから同定する情報量規準の提案をするにあたって、当初ベイズ理論に基づくモデル選択規準として最も理論的に優れていると考えられているDeviance Information Criterion を小標本に拡張することを考えていたが、経済学的な基礎がしっかりしているAIDSモデルにおいては、単なる予測二乗誤差の最小化より、真のモデルの同定が重要であると考えるようになり、その方向に基づいて研究を進めている。上述のDiscussion Seriesペーパーはそのように方針を変更した後のものである。
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次年度の研究費の使用計画 |
インクカートリッジ・マルチコピーペーパーなど合計5245円(残額相当分)を購入したが、3/31までに支払が完了していないものについては、26年度分に計上されるという連絡を事務から受けている。 上記のように、既に使用済み。
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