研究課題/領域番号 |
25590057
|
研究種目 |
挑戦的萌芽研究
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
阿部 顕三 大阪大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (00175902)
|
研究分担者 |
神事 直人 京都大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (60345452)
石川 城太 一橋大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (80240761)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 国際経済学 |
研究概要 |
平成25年度は、まず最近の「貿易と文化」に関する理論・実証研究や、文化経済学において関連する先行研究について資料を収集し、サーベイを行った。特に、ケース・スタディの対象となる産業として考えられるワインやビール等の嗜好性飲料の文化的側面に関する既存研究やWTO紛争解決機関の報告書等について検討し、本研究で重要となる問題について整理した。 これらの作業を通じて、「貿易と文化」に関する研究において、個人の選好やその行動から文化がどのように形成され、逆に文化が個人の消費行動や企業の生産活動にどのような影響を与えるかを理論的に解明することが重要であることが明らかになった。特に、文化という要素を消費や生産の意志決定のメカニズムにどのように取り込むかについて検討し、その具体的なモデル化の可能性について考察した。 さらに、文化は市場で取引される財・サービスとしての側面を持つため、その財・サービスの貿易取引が文化の維持・継承にも大きな影響を与える。特に、文化はサービス産業と深く結びついており、文化財や文化産業の貿易促進においては、サービス貿易の自由化が重要な鍵を握ることを明らかにした。そこで、サービス貿易の自由化の問題について従来の知見を整理するとともに、文化的側面を貿易の理論モデルに導入する方法について検討した。また、貿易が文化のダイナミズムに与える影響について分析するためのモデルに関しても、関連する最近の既存研究を参考にしながら検討を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度中に実施することを計画していた既存研究や関連する資料等の収集と内容の検討についてはほぼ計画通りに遂行されている。また、本研究において行う理論分析で用いるモデルに関しても、手がかりとなる先行研究を参考にしながら検討を進めており、全体としてはおおむね順調に進展している状況である。ただ、外国での調査の準備が間に合わず、海外のケース・スタディなどは実施できなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
平成25年度に収集した既存研究の知見に関する情報を参考にしながら、文化的要素を取り入れた貿易の新理論の構築や、貿易が文化のダイナミズムに与える影響に関する理論的分析に向けて今後本格的な研究に取り組んでいく。また、ケース・スタディの実施に向けた準備も進めるとともに、WTOにおける貿易と文化を巡る貿易紛争や、FTA交渉における文化の問題等についても、国際経済法の専門家や行政官らから情報収集を行っていく。さらに、文化財や文化産業の貿易とサービス貿易との関連のリサーチを今後も継続して行う。特にサービス産業の直接投資について考察する。また、言語や宗教と貿易との関連についてもできればリサーチを開始する予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、文化的要素を取り入れた貿易理論の構築のために、「貿易と文化」の研究に関する調査やサーベイを行う予定であった。しかし、調査を行うための準備が十分に整わず、調査のための国内旅費および外国旅費に支出することができなかったため、それらを繰り越すこととなった。 平成26年度は、引き続き「貿易と文化」の研究に関するサーベイやケース・スタディを行い、文化的要素を取り入れた貿易理論の基礎理論を構築する予定である。「貿易と文化」の研究に関する調査が遅れていたため、その調査も合わせて実施する予定である。繰り越した研究費は、そのための国内旅費および外国旅費として使用する予定である。
|