昨年度までに作成した、大正・昭和の歴史資料の電子データを利用して、基本的には以下の回帰分析を行った。 まず、大正7年(1918年)から大正9年(1920年)にかけてのスペイン風邪流行期の死亡数を利用して、府県毎に異なる人口変動が、その後の中学入学率、高校大学進学率にどのような影響を与えているか、そして壮丁調査で計測された学力にどのような影響を与えているかを分析した。人口変動の指標としては、12歳時点での生存率とした。これは、尋常小学校卒業時点(中学入学直前)の潜在的中学進学希望者の計測だからである。 分析は、都道府県およびコホートの固定効果を入れた単回帰分析である。ソフトウェアとしてはStataを利用した。現在の予備的結果として、12歳時点の生存率の変動は(1)中学への入学率にマイナスの影響、(2)人口あたりの中学の卒業率にマイナスの影響、があったが、(3)(中学入学者中の)中学への卒業率に無関係、(4)高校大学への進学率(中学卒業者中)と無関係であった。さらに、12歳時点の生存率は、(5)中学中退者の国語の成績にプラスの影響、(6)中学中退者の数学の成績に影響なし(7)中学卒業者の20歳の社会科の成績に影響なし、という結果となった。 現在は、上記の結果の頑健性を確認するとともに、中学の入学率が、中学中退者や中学卒業者の成績に与えた影響を、人口変動を操作変数とした二段階推計法により推計を行っている。5月までに論文をまとめ、本年度中に学会での公表を申請する予定である。
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