本研究は、日本のアジア貿易における荷主企業のモード選択メカニズムを明らかにして、コンテナ海運物流と空運物流の推定値を得たうえで、日本のアジア貿易における現地ロジスティクス業態革新指標を実証的に構築することである。展開された本研究の実績は以下のとおりである。 1.1996-2011年における我が国のアジア輸出物流について、空運荷主とコンテナ海運荷主間のモード選択に時間差を設けて分布ラグを推定して、空運がリードしコンテナ海運がフォローする8年周期のロジスティクス・サイクルが機能していることを導き、これを受けてこのサイクルを起動させる日本の空運輸出物流を、2003-2011年における中国・NIES・ASEANのアジア9か国地域に関するパネルデータで捉えて推定した結果、タイが直接投資受け入れ先として相対的に優位にあること並びにASEAN4がサプライチェーン構築への構造変動期、躍進期にあることを実証した。 2.一方、わが国の2000~2011年におけるアジアからの輸入物流の推定に当たっては、日本フォワーダーの国・地域別の3PL業態の物流量対応力弾性値が小さいほど革新優位にあり、 逆に日本のロジスティクス段階への到達を目指すそれぞれの国・地域の物流環境キャッチアップ整備速度弾性値が大きいほど速度優位になるので、 両者の差が乖離している国・地域ほど日本の輸入ロジスティクス拠点として競争優位にあるという革新度指標を導入した。推定結果に従えば、日本の輸入ロジスティクス拠点競争優位国・地域は、 平常時では韓国、タイ、台湾、シンガポール、マレーシアの順であるが、世界金融危機などへの危機対応力を考慮すると、タイ、韓国、マレーシア、台湾、シンガポールの順に変わること、また危機に臨む柔軟な対応力ではASEAN地域の優位が顕著であること、この結果は上記1の輸出側の分析結果ともほぼ整合しており、革新度指標が現実適合性をもつことを確認できた。
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