研究課題/領域番号 |
25590083
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研究機関 | 江戸川大学 |
研究代表者 |
中口 哲治 江戸川大学, 社会学部, 教授 (50592705)
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研究分担者 |
茅野 廣行 江戸川大学, 社会学部, 教授 (90327239)
安田 英土 江戸川大学, 社会学部, 教授 (40327242)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 価値観共有 / 暗黙知 / 認知心理学 / 共感連鎖 / 潜在認知 / 感覚系 / インフルエンサー / 心脳マーケティング |
研究実績の概要 |
近年、有名人やモデル、ブロガー、友人らが発信する言語・画像がきっかけとなる価値観共有型消費が広がっており、商品だけでなくガールズコレクションや音楽イベントへの参加にも深く影響を与えている。本研究の核心は、これら価値観共有型消費のプロセスを解明し感覚系と呼ばれる企業への経営学的な貢献を果たす事である。まず価値観共有という概念の定義化に向けて国内外の潜行研究文献を調査。結果、価値観共有は肯定的潜在認知に基づく共感連鎖であると解釈。潜在認知の抽出手法としてメタファーを使ったZMET調査、潜在的態度の解明を狙いとしたIAT、商品選好時における「視線の偏り」を主眼に置いた実験心理学的手法などが挙げられる。 文献調査後、共同研究者との意見交換や業界関係者へのインタビューを実施。価値観共有プロセスに関し「①価値観共有を醸成する潜在意識は経験・画像映像の断片記憶として暗黙知的な文脈で存在している②これらは友人との会話やイベント参加時における刺激(視覚、聴覚、嗅覚、触覚など)によって再結合・再編集を繰り返す。それらが顕在意識に励起され感動と共感を誘発させる③このような状況感情は言語・画像に変換されてSNSなどの通信媒体を通じ他の友人及び第三者に伝搬。共感連鎖が広がり価値観共有による新たな行動規範が生まれる」といった仮説を策定した。②と③を検証すべく読者モデル、業界インフルエンサーに感覚系イベント(ガールズコレクション)来場者意識調査とブログ解析を実施。また、彼女らに共感系画像の提示によるアンケートも同時に行った。現在全ての調査データの解析を行っているが概ね仮説に近いプロセスに集約されて行くものと思われる。また①に挙げた暗黙知的な文脈で形成される共感要素・要因の存在を確認するために友人ペアによる暗黙共感抽出実験を実施。こちらもデータ解析を進め仮説検証に向けた取り組みを行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初、F1女性たちの感覚的商品購入や集客イベントへの参加は友人との価値観共有が引き金となり促進拡散されていくためインフルエンサーアンケートなど調査データの収集が有効だとして本研究を進めてきた。ところが様々な文献調査、研究者との意見交換の結果、価値観共有の初期段階では潜在認知や共感連鎖という心脳的な要素が関わっている事が判明。主観評価であるアンケート調査は設問内容に同調しながら受け答えするため潜在的な気分や感情までは抽出不可能。結果、脳活動や視線の偏り、反応時間の測定など客観評価の手法に目を向けざるをえない状況になった。これらの客観評価にはNIRSやfMRIなどでの解析が有効であるが費用などの面で現実的でないため画像を使った友人同士の共感連鎖実験やインフルエンサーたちが発信したブログのテキストマイニングを試行。それぞれのデータは収集出来たが、これらの要件定義や実験手法の開発・準備に多くの時間を費やしたため解析考察までに至らず研究全体のスケジュールが半年程度ずれ込む事となった。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度、27年度に行った読者モデル・インフルエンサーへの「ガールズコレクションへの参加行動と意識」調並の分析びにブログのテキストマイニングの解析と考察を加えイベント参加と共感、共感と共感連鎖についての相関を検証する事を第一義とする。また暗黙知的な文脈で形成される共感要素・要因の存在を確認するために友人ペアによる暗黙共感抽出実験の結果も含め総合的な分析と考察を加える。具体的には以下の通り。 1)ガールズコレクション開催時にモデルとして参加した女性たちが発信したブログの収集は終了。これらのデータを活用しキーワード抽出、関連性評価、構造分析等により言語と共感連鎖との関連性を分析する。 2)ガールズコレクション来場者約100名に対する共感画像アンケート調査は実施済み。データの集計、考察を加え共感連鎖を引き起こす3つのタイプ「親近性」「憧憬性」「新奇性」の適合性など分析と考察を加える。 3)友人同士、非友人同士で記憶の銘記と潜在認知、暗黙知の共有化がどのように存在・作用しているかを共感画像を使って17組のペアで共感連鎖実験を実施。実験データの収集は終了しているので共感の連続性、順位付け、反応時間についての詳細な分析を行う予定。 以上1)2)3)といった一連の作業を通じ本研究の主題である価値観共有プロセスの特定化と検証並びに構造のモデル化を分散構造分析などの手法を駆使してアプローチして行く。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度に予定していたアンケート調査や心理実験の遅延に伴い経費処理が十分になされなかったことが使用額の差(44万円残分)を生んだ。具体的な内容は以下の通り。1)江戸川ガールズコレクション来場者への共感画像アンケートのサンプル規模が500名規模から100名に縮小化、予定していた予算を消化出来なかった。当初実施費用350,000円→実績60,000円2)新たに実施した友人・非友人ペアによる共感連鎖実験においてデータ処理並びにデータ解析が難航。研究補助要員への給与が支払われていない状況にあり経費の残りが派生した。当初所用経費250,000円→実績100,000円
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度の最終積み残し分を活用して以下3つの項目に対する追加研究を行う。 ①サンプル数が不足していた江戸川ガールズコレクション追加アンケート調査を実施。→アンケート謝礼他90,000円②2年間で行ったアンケート調査や心理実験のデータを最新の解析手法を用いて行う。→研究補助要員給与150,000円③データの追認性を担保するためランダムに抽出したガールズコレクション参加者に対するウェブ調査を追加で実施しアナログの調査結果と比較検討する。ウェブアンケート調査費→200,000円
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