ファミリービジネス研究は世界的に急拡大しているが、日本においては際だった企業が多数あるにもかかわらず、研究の遅れが増大している。原因としては、従来の経営学において重視されてこなかったことに加え、通常の経営学とは異なり、家族という私的領域に踏み入らねばならないこと、さらに世代にまたがった視点が必要であることがあげられる。研究体制と研究方法論を固める必要がある。本研究は後者の研究方法論に焦点を当て、次の4点で実施した。成果は、初期的であるが新しい研究方法論の提示である。 ①研究方法論の先行研究レビュー:現象から直接理論を抽出するGrounded theoryに代表される質的研究の方法論、人々の語りをたよりにするNarrative分析、ファミリーストーリーを用いた複数世代研究法、また実践的知識の形式化研究を検討した。その結果、後者2つが特に有用であることが分った。ただ実践的知識の形式化研究は乏しいので新たに方法を開発した。 ②理論研究:質的研究では、理論的視野と観察可能なフィールドをつなぐため、個別の研究方法の開発が必要と考えられる。本研究では理論的視野としては、経営の実践的知識をとらえるため社会学の制度論およびBourdieuの実践論理、家族をとらえるため社会人類学および行動生態学に基礎をおいた。 ③フィールド調査と研究方法評価:福島市の企業の社長と後継者に二度に渡りインタビューを行った。置かれた状況から二世代同席で実施したが、ある種のグループインタビューとして有効であった。①と②とあわせ研究方法論を開発・確認した。 ④国際比較研究:研究滞在したコロンボ大学のDharmadasa博士との共同研究を行った。スリランカと日本は、人類学的に家族類型が異なっており比較対象として適している。成果は、2015.7の国際学会においてフルペーパーとともに報告予定である。
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