研究課題
挑戦的萌芽研究
本研究の目的は、競争優位性の獲得における因果関係概念を再検証し、新たな方法論を提示することにある。本研究では、様々な研究領域の広範なサーベイに基づき、「偶然性」を含む様々な要素間のつながり・相互作用・組み合わせによる複雑な因果関係を複雑なまま把握できるような理論枠組みを構築することを試みる。その上で、日本・アジアNIEs・中国の多国籍企業を対象にグローバル競争における競争優位性の獲得の実証分析を行う。本研究の3年間の研究計画の進行プロセスは下記のとおりである。当初の1年半が理論フレームワークの確定、続く半年がケース分析のための資料収集、最後の1年が実証分析である。平成25年度においては、上記の研究計画に基づき、主に理論フレームワーク構築のための既存研究サーベイを行った。まず4月から6月にかけては、主に戦略論の既存研究の整理を通じて、本研究の課題を明確にする作業を行った。次に7月から12月にかけて、統計的因果推論、社会ネットワーク論、イノベーション論等の既存研究サーベイを通じて、社会科学における因果関係概念について考察した。また10月には、近隣大学の研究者との定期研究会において、これまでの研究経過に関する報告を行った。最後に、1月から3月までの期間においては、進化論や物理学、科学哲学の文献サーベイを通じて科学における「偶然性」の取り扱いに関して考察を行った。本研究のチャレンジ性は、様々な領域の既存研究を統合する学際性にある。その意味で、今年度1年間を通じて、上記のように幅広い既存研究サーベイから因果関係概念を検証できたことは、本研究にとって大きな意義があった。他方で、本年度は、これまで行ってきた台湾における日系企業の技術移転に関する研究を書籍として発表するなど、本研究の後半に計画しているアジアの多国籍企業のグローバル競争についての実証分析に関連する研究も並行して行った。
1: 当初の計画以上に進展している
上記の研究実績の概要の通り、平成25年度は、1年間を通じて理論フレームワーク構築のための既存研究サーベイを行った。平成25年度の研究の目標は、以上の既存研究サーベイを通じて、従来の戦略論のように単純な因果関係の論理へと還元するのではなく、偶然性を含む様々な要素間の相互作用や組み合わせによる複雑な因果関係を複雑なまま把握できるような理論枠組みについて考察していくことにあった。こうした目標は今年度の研究を通じて達成できたと考えている。さらに、本年度は、本研究の後半に計画しているアジアの多国籍企業のグローバル競争についての実証分析に関連する研究も並行して行った。具体的には、まず9月に筆者がこれまで行ってきた台湾における日系企業の技術移転に関する研究を書籍として発表した。さらに愛知大学国際中国学研究センターの共同研究として、日韓自動車部品貿易についての研究報告、東南アジアにおける日中二輪車企業の企業間競争に関する論文執筆(平成26年度に共著書として発行予定)等を行った。以上のことから、現在までの達成度は、当初に計画以上に進展していると自己評価できる。
平成26年度は前半の半年を理論フレームワークの構築の継続にあて、後半の半年を実証分析のための資料収集にあてることを計画している。特に本年度に行った既存研究サーベイを統括し、中間的な研究成果として因果関係概念に関するサーベイ論文を執筆し、平成26年度中に発表することを目指す。
320円であり、端数の範囲内と考えられる。特になし。
すべて 2013 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件) 図書 (1件)
愛知経営論集
巻: 第168号 ページ: 1-16
Annals of Organizational Science (International Special Issue of Organizational Science)
巻: Vol. 46 No. 5 ページ: 29-47