研究課題/領域番号 |
25590090
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 帝塚山大学 |
研究代表者 |
田中 雅子 帝塚山大学, 経営学部, 教授 (80321107)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 経営理念の浸透 / グローバル化 / ダイバーシティ / 外国人従業員 / 日本人従業員 |
研究概要 |
経営理念浸透研究において、外国人従業員を対象とした研究は皆無である。国内の日本人従業員のみを対象とした理論構築だけではグローバル化が加速する実業界の現状に応えうる研究にはなり得ない。これが本研究の問題意識である。 そこで本研究は、海外進出および外国人従業員の採用を積極的に進めている企業の海外支社の支社長および国内の海外経験責任者、また国内外の外国人従業員にインタビュー調査を行い、それが日本人従業員の経営理念浸透のメカニズムやプロセスといかに異なり、外国人従業員に対して、どのような理念浸透施策を打って出ることが有効であるのかを明らかにしたいと考えた。 25年度に実施した海外支店および海外経験者の調査からは、ドイツ・フランス・アメリカ・中国の海外支店における外国人従業員への理念浸透施策として、以下の発見事実を共通項として得ることができた。まず大前提として肝要なのは、文化的背景や国民性を考慮するという点である。そこに立って、ルールや制度をつくること、コミュニケーションをとること、リスペクトされること、日本企業の独自性を出すことが必要であることがわかった。 また、日本国内の企業では、外国人従業員と日本人従業員を(人事制度やプロモート、チャンスの提供等)同じ俎上で扱っているだけでなく、彼らを自国と日本本社との懸け橋とすることで、マイノリティーであることの強みを活かしていることが明らかになった。それに対し、外国人従業員もやりがいや満足を見出していることが語られ、これらの施策が功を奏し、理念浸透に一役買っていることが分析できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究期間は2年であるが、1年目である25年度はフィールドリサーチに重きを置き、国内外でのインタビュー調査および参与観察を以下のとおり実施した。 ①25年5月:堀場製作所 Global Strategy Meeting(海外支社長対象)参与観察(会長講演、研修、懇親会)・インタビュー調査 ②25年7月:堀場製作所 執行役員インタビュー調査 ③25年9月:HORIBA Europe GmbH(フランクフルト支店)参与観察(Manager meeting, Training session)・インタビュー調査 ④26年3月:HORIBA Italy Branch(ローマ支店)インタビュー調査(支社長・秘書・営業部長・経理担当者) 調査は予定どおり、すべて25年度に終えており、①~③の分析もほぼ終えているため、おおむね研究は順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
現在は、3月に実施したローマ支店でのインタビュー調査を分析中である。この調査は支店長をはじめ、従業員全員がイタリア人であることから、上述した視点とはまた別の視角からの検討を可能にするはずである。 これら調査の発見事実を総合して、26年度は、テーマでもある「外国人従業員への経営理念浸透-日本人従業員との比較検討」を行い、論文執筆や学会発表をする予定である。 その際、フレームワークとするのは、金井・松岡・藤本(1997)が理念浸透を検討する際のモデルとした「強い文化モデル」「観察学習モデル」「意味生成モデル」の3つのモデルである。田中(2014)はこのモデルに、10年来の日本企業における調査の結果を照らし合わせ、「観察学習」が最も有望なモデルであることを明らかにした。それは経営者から若手に至るまで見受けることができたからである。しかし、海外での調査からは、「観察学習」の有効性は確認することができそうになく、「強い文化」と「意味生成」のモデルに、有望な視角が見出せそうである。 このように、日本人従業員の理念浸透と比較検討することにより、共通点と相違点を浮き彫りにしながら、3つのモデルをより前進させていくことで、所期の目的を達成するつもりである。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は99円であり、やむを得ない端数であると考えている。 テープ起こし代に使用したい。
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