経営理念の浸透に関する研究では、日本本社の日本人成員を対象とした理論構築が進められてきた。ところが今や、グローバル化やM&A、組織におけるダイバーシティなど、国際化への対応が大きな課題となっており、そのなかには理念浸透に関わる問題も含まれている。しかし、これに対応した先行研究は数えるほどである。 この問題意識を元に、本研究は、現地法人社長経験者と現地外国人スタッフへのインタビュー調査を元に、現地法人への理念浸透施策を明らかにしたいと考えた。 既存の研究の不足点を踏まえ、本研究は①あくまで理念浸透を軸に議論を展開する、②理念浸透の全体像を追求する、③本社で理念が浸透している企業を調査対象とする、④偏りのないよう複数の国の現地法人に調査を実施する、⑤当該企業がとっている浸透施策を、企業側の視点からだけでなく、現地スタッフの視点も取り込みながら、有効性を検証することを旨とした。 その結果、①マネジメントの土台を築くことが前提となること、②理念浸透施策にも前提となることと方法論となるものがあること。具体的には、尊敬できるリーダー・会社であるかを前提に、そのうえに立脚したリーダーシップの発揮や議論といった直接的施策と、日本企業の強みを仕事や制度に組み込み、そこから理念を体得させるという間接的施策が車輪の両輪となり、現地法人において理念浸透が進むことを導出することができた。 このように本研究は、仮説発見型の調査から、日本人社長と外国人スタッフの語りを抱き合わせにした分析を行い、現地法人における理念浸透の前提と施策を明らかにした。これらは今までの研究では触れられることのなかったもので、本研究の意義であり貢献と考えている。
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