研究課題/領域番号 |
25590092
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
薄井 和夫 埼玉大学, 経済学部, 教授 (60151859)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 実践としてのマーケティング / 実践論的転回 |
研究概要 |
本年度は、研究の初年度として、SAP-IN (Strategy as Practice International Network) に掲げられた諸研究の包括的なサーベイを行なうと同時に、コペンハーゲン市で開催された第16回マーケティング史学会(CHARM, Confernece on Historical Research and Analysis in Marketing)に参加し、実践としてのマーケティングに関心をもつ研究者と意見交換を行なった。また、海外研究協力者 John Dawson エディンバラ大学名誉教授と、東京で意見交換を行なった。 これらの活動の結果、"situated(状況に埋め込まれた、状況的、状況依存的)" という概念が、実践としてのマーケティング研究のキー概念であること、また、これとのかかわりで、実践コミュニティ(communities of practice)概念が、分析視角として重要な概念であることを確認し、企業者性能(entrepreneurship)が実践コミュニティという実践的基盤を有しているのではないかという作業仮説を得た。 さらに、理論の実践論的転回に影響を与えている諸学者のなかでも、アンソニー・ギデンスの社会理論の可能性について、Dawson 教授を含む少なからぬ研究者が強い関心を寄せている。マーケティング諸活動が市場を構成し、構成された市場にマーケティング諸活動が拘束されるという、構造(=市場)と個々の実践(=マーケティング)の相互関係の分析が今後の焦点のひとつとなるという点は、本年度の研究で得たもうひとつの作業仮説である。 最後に、実践論的転回を担う社会理論は、クリティカル・マーケティングというマーケティングの新たな研究潮流にも影響を与えており、実践としてのマーケティング研究とクリティカル・マーケティング研究が少なからぬ部分で重なり合っているという点は、本年度の研究から得られた貴重な示唆であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画で記した諸資料の網羅的な収集が順調に推移し、次年度の研究と成果に結びつく作業仮説を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
1.実践としてのマーケティング研究の二大領域として、(1)企業・組織内部におけるマーケティング研究の実践論的分析、(2)マーケティングと市場全体との関係を実践論的視点で見直すことを措定する。 2.企業内のマーケティングの実践論的研究として、実践コミュニティの概念を駆使した研究を進展させる。 3.市場全体とマーケティングとの関係については、特にアンソニー・ギデンスの社会理論やクリティカル・マーケティング研究のとの関連を基礎に、実践としてのマーケティング研究の内容を進展させる。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が生じたのは、主に謝金と旅費が当初の積算よりも小さかったことによる。 次年度は、この分をエディンバラ大学での研究討論と調査に使用する予定である。
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