研究課題
本年度は、研究計画の最終年度として、本研究を萌芽的研究から本格的研究へと展開させるための総括を行なった。実践としてのマーケティング研究は、出自が異なるとみられているクリティカル・マーケティング研究と少なからぬ接点を有している。トップダウン型のマーケティング意思決定・戦略立案は、現場の実践においてどのように理解され、執行されているかという実態分析を欠落させれば、結局のところ計画倒れに終わってしまうという論点は、実践としてのマーケティング研究における重要な論点であるが、こうした現場重視の姿勢は、既存の主流的研究に対してきわめてクリティカルなものであり、この点において、クリティカル・マーケティング研究との親和性はきわめて高い。だが、実践としてのマーケティング研究の現場分析は、現場をどのように分析するのかという方法的視点において、なお共通的理解が見出されてはいないということは、本研究で明らかにされてきた点のひとつである。本研究では、実践としてのマーケティング研究でしばしば行なわれる参与観察について、これを単なる現場の記述的理解に終わらせず、分析的に実態を把握するために、言語学の語用論における関連性理論の研究成果と、教育学などの分野ではすでに少なからぬ応用が試みられている、人類学研究をベースとする実践コミュニティ概念を経営・マーケティング研究に活用することにより、実践としてのマーケティング研究を前進させることができるであろうとの結論を得た。本研究は、こうした結論に到達するプロセスとして、クリティカルな姿勢をもつマーケターの実証分析、現場に視点を置くマーケティングの歴史的概念の検討、関連性理論と実践コミュニティ概念の方法的吟味、戦略論および社会学との関連性の検討を行なった。これらにより本研究は萌芽的研究から本格的な研究展開への端緒を切り開いた。
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拓殖大学経理研究
巻: 106 ページ: 169,208
Richard A. Hawkins ed., Crossing Boundaries, Spanning Borders: Voyages Around Marketing’s Past, Proceedings of the CHARM
巻: 17 ページ: 225, 229