研究課題/領域番号 |
25590096
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
湯淺 正敏 日本大学, 法学部, 教授 (60366523)
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研究分担者 |
西村 邦裕 東京大学, 情報理工学(系)研究科, 研究員 (70451797)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | データ・クリエイティブ / データ・ジャーナリズム / ビッグ・データ / ソーシャル・イシュー |
研究概要 |
欧米有力メディアでは、データ・ジャーナリズムがニュース報道のイノベーションとして、既に定着してきている。 研究目的である「データ・クリエイティブ」の基となる欧米のデータ・ジャーナリズムについて、海外文献(『The Data Journalism Handbook』、『VISUALIZE THIS 』等)の収集のみならず、最新動向を把握するためにも、データ・ジャーナリズムに詳しい専門家、評論家から実務家まで広範に亘って、取材及び「データ・ジャーナリズム」研究会講師としての招聘によって、理論、実務両面から研究を進めて行った。講演会講師または取材先については、以下の通り。朝日新聞東京本社デジタルウオッチャー平 和博氏、中日新聞社編集局電子編集部松波 功氏、在英ジャーナリスト小林恭子氏、NHK報道局ネット報道部Webディレクター足立 義則氏、多摩美術大学教授佐藤達郎氏。 各氏の取材等からの助言によって、広告分野への応用について様々なヒントが得られた。 ・クライアントベースでの編集タイアップ広告では、データ・ジャーナリズムの手法を取り入れ、進展する余地はあろうと見込まれる。 ・また、ジャーナリズムと広告の共創(コラボ)の可能性についても、編集タイアップ広告など今後期待される。 一方カンヌライオンズの視察からは、各部門の主な受賞作品を見渡してみると、社会的課題へのメッセージや社会に役立つ、社会に良いことなど社会性志向の作品が目立つようになってきた。 社会的課題に対する広告表現手法の開発が感じられた。 こうした意見によって、データ・ジャーナリズムの広告分野への応用は意義あるものとして確信をもて、データ・クリエイティブのコンセプト構築、具体的プロトタイプ制作(東京メトロ乗降客数のマッピング等)の段階に入ったところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
データ・ジャーナリズムについての取材等によって、同手法は、社会的課題に対するエビデンスベーストな企業広告に有効であることの確信が得られた。そして、純広告のスタイルよりは、新聞社等媒体社側の編集との協力、つまり編集タイアップ広告が実現性が高いものと目される。 また、紙媒体だけではなく、Webを利用して、ソーシャルメディアによるユーザー参加型のコンテンツ、インタラクティブなデータビジュアライゼーションなどを駆使したものをプロトタイプ開発の方向性としていくことで合意が得られた。 広告の分野では、企業がミッションやビジョンや価値を積極的にメッセージとして提供する、価値主導型のマーケティングをすることが、消費者の欲求を満足させ、企業価値を高め、マーケティング活動にも好影響をもたらすものと言える。企業自身のミッション、ビジョン、社会的価値観で、消費者に対して精神的に訴えることでの差別化が日増しに重要になってきた。 そのような背景の中でカンヌライオンズの視察後、データ・クリエイティブのコンセプトとして、「社会に良いこと」、「社会的課題へのソリューション」、「社会的効用、社会に役立つこと」、これらを包括する概念として、、“Social Voice”を提唱した。Social Voiceを生み出す原動力、イノベーションを成り立たせるものとしては、Disruption(創造的破壊)的な発想(Big Idea)、ソーシャルメディアなど人と人をコネクトするテクノロジー&メディア、ユーザーとクリエイーター、ジャーナリズムとアドバタイジング等のCo-Creation(共創)の3つが挙げられる。 このようなフレームの中で広告表現手法、データ・クリエイティブの開発を行なっていく。
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今後の研究の推進方策 |
国際ジャーナリズム大会(伊ペルージャ4/30~5/4)に参加し、「The year in data journalism」、「Data journalism toole:maps」(5/1)等データ・ジャーナリズム関連のセミナー、シンポジウム、ワークショップ等聴講し、最新のデータ・ジャーナリズム手法を修得し、データ・クリエイティブー広告表現手法の開発に役立てる。 同大会で得られた情報や知見を日経広告研究所報2014年10月号に論文として掲載する予定でいる。また、有斐閣の電子プラットフォームを利用して、アップトゥデイトな情報については、電子出版による情報提供を考えている。 6~8月までに企業のソーシャル・マーケティングに結びつく社会的課題(地球温暖化とCO2削減、サスティナビリティ、人口・少子高齢社会への対応等)の抽出、それに関連したデータによるグラフィックス化を検討する。 昨年カンヌライオンズのセミナーやデータ・クリエイティブ研究会で得られた社会的課題に対するソリューションを基に9月以降、研究協力者であるDAC(デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム)、新たに連携研究者に加わる多摩美術大学教授佐藤達郎氏(元クリエーター、カンヌライオンズ審査員経験者)とユーザー参加型ソーシャルコンテンツの開発に取り組み、データ・クリエイティブ手法のプロトタイプを制作する方向で作業を進めてゆく。 2014年12月日本広告学会全国大会(立教大学)で成果発表を行ない、その後論文もしくは書籍化の検討を行う予定でいる。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初予定していた国際ジャーナリズム大会への参加が間に合わなかったため、海外旅費は26年度に持ち越された。 また、広告クリエーティブのリサーチである、カンヌライオンズ視察は、別の研究費を海外旅費に当てた。 26年度持ち越された海外旅費については、国際ジャーナリズム大会(4月30~5月4日開催)へ参加するため、近く実行される。また、今年度9月以降のプロトタイプ制作によってその他制作費の実行も見込まれる。
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