本研究の課題は、口コミの作動条件として動機と情報内容の影響を実証的に明らかにすることであった。口コミは、製品特性の情報伝達としてきわめて有効な手段であるのみならず、それが社会的関係を有効にすることにもつながる。たとえば、自分だけが使っていた製品を紹介した友だちから大きな感謝をもらった時、社会関係は一層うまくなるようになるというようなことである。 このような考えから、口コミは社会的な動機によって作動し、自分と社会の関係を実感する手段となると思われる。ここで社会的動機とは、自分の発言が他人に有効であろうとする姿勢のことである。このことから、口コミが、商品情報の伝達手段として非常に強い影響力を持っていることがわかる。自分の周り(つまり社会)にいいことをしたいという動機を持っている人は、口コミを行いやすいことが予想できる。 本研究では、どのような情報は口コミが作動しやすいか、そしてその情報を伝達すべき動機は何なのか、について約600名の消費者に質問調査を行い、作動特性を明らかにした。その結果わかったことは、次の3点である。 第1に、口コミは肯定的と否定的の2つのタイプがあることである。両方に、社会的関係の強さが影響するが、中でも製品の満足度が一段と強く効いている。製品に不満足であれば、否定的口コミは一段と多く起こる。第2に、肯定的・否定的口コミの両方が、社会的自己評価に影響している。この意味は、口コミをすることで、社会的に認められたと知覚するということである。自分の発言によって、周囲へいい影響をもたらしたと見做すことができるからである。第3に、その中でも、肯定的な口コミがこそが、社会的な自己評価を高めることがわかった。これは、悪い情報(製品の不満足さ)よりも、いい情報の伝達によって周囲をよくすると自己評価が高くなると理解できる。
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