最終年度(2016年度)においては、2015年度までに得られた結論を、他産業へ応用することを検討した(これは当初の研究計画には含まれなかったが、本研究の結論が製薬産業だけに該当する特異なものなのか、或いは広く一般的な産業においても該当するのかを検討することで、本研究の意義がさらに大きなものになると判断した)。具体的には、知識をマーケティングする際の特性として、未完成品の取引、文脈依存性、顧客志向の必要性、交渉プロセスの存在、知識の対称性といった5つが導かれた。また、知識のマーケティングにおいては特許と時間という要因が効いていることも導かれた。以上の結論は製薬産業における知見のため、議論の一般化として他産業でも当てはまるかどうかを検討した。その結果、確かに5つの特性、さらには2つの要因とも当てはまることを検証できた。しかし、その当てはまりは製薬産業ほど強くないことも分かった。 その要因として、製薬産業における製品、つまり新薬はわずか2つほどの特許からなっていることを指摘できる。一方、たとえば電機や自動車などの製品では、完成品となるまでには数百から数万の特許を要する。そのため、1つの特許、つまり知識が占める割合が低下してしてしまうのである。よって、核となる特許(知識)を特定化して、さらなる検証を試みることが今後の研究課題として残された。あるいは、今回の調査は小規模であったため、規模を大きくして調査を行ってみる必要もあると思われる。
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