研究課題/領域番号 |
25590104
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 武蔵大学 |
研究代表者 |
荒田 映子 武蔵大学, 経済学部, 教授 (00386351)
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研究分担者 |
下川 拓平 武蔵大学, 経済学部, 教授 (00267337)
神楽岡 優昌 武蔵大学, 経済学部, 教授 (40328927)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 会計基準 / 協力ゲーム理論 |
研究概要 |
平成25年度の活動は、主に、経済制度に関する研究交流と、会計基準の合理性を分析するためのモデル構築をおこなった。 もともと会計制度を分析するツールとしてゲーム理論を選択したが、他分野で同様に、制度や慣習について分析している研究者との交流が重要であると考え、「経済制度の学際的ワークショップ」(Interdisciplinary Workshop of Economics and Institutions )を立ち上げ、法学、政治学、経営学、経済学、経済史、数理ファイナンス、数理システム論、会計学を専門とする研究者が年4回集まり、研究手法などに関する情報交換をする場を設けた。これは我々の研究にとってはもちろんのこと、文系と理系の研究者の交流という点で、社会的にも意義のあるものとなりつつあると認識している。(本研究会の報告リストはhttp://iwei.barrel-of-knowledge.info/の通り) 研究実績としては、まず、長きにわたって実務として根付いてきた減価償却方法の合理性を分析するモデルを協力ゲーム理論により構築した。その結果、定額法の妥当性が数学的に証明された。また、その分析モデルを用いて、現在国際財務報告基準で問題となっている公正価値評価や減損会計などの妥当性についても分析を行ない、学会報告を行っている。平成26年度の早い段階で論文として海外ジャーナルに投稿予定である。 また、制度をゲーム理論によって分析するにあたって、過去のゲーム理論に関する論争を再度ひも解くことで、問題点の整理をおこなった。その成果は、下川が、「規範と実証:ゲーム理論における一つの論争をめぐって」、荒田が「会計基準の不可能性定理と規範研究」の論稿を執筆中で、次年度公表予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初は、会計制度をめぐるプレイヤーの利得関数を、証券市場関連の実証成果をベースに特定する予定であったが、その作業は行わなかった。 先行研究のサーベイ、共同研究者および研究会参加者間での議論を重ねる過程で、我々のモデルにおいて実証結果から各プレイヤーの効用関数を推定するより、効用関数に依存しないモデルの設計の可能性を検討すべきであると判断したからである。したがって実証研究の成果をサーベイするかわりに、上に述べた近日公表予定の2本の論文(下川、荒田著)執筆に至った。 したがって重点を置くポイントが変わったが、達成度としてはおおむね順調であると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
荒田は、減価償却方法について分析したモデルを他の会計ルール(収益認識モデル)に適用できるよう一般化を試みる。さらにモデル自体の妥当性を示す理論研究もあわせて行う。また、いわゆる財務報告目的の会計だけでなく、課税所得計算にも着目し、我が国の確定決算主義の合理性についてもゲーム理論を用いた分析を行う。 下川は、本研究において構成した協力ゲームのモデル上で、「プレイヤーの協力状態」に着目した、提携構造間の二項関係を複数構成し、それら夫々に対応する様相言明との関係を明かにしつつある。この二項関係(Kripke Frame) は、所与である協力ゲームの特性函数を利用する事で、きわめて豊かなバリエーションをもつ。 つまり、まず1) 様相言語による、「成立すべき事態」の記述、2) それらの言明(公準)を満足させるような、提携構造上の順序関係の発見、明確化、という段階をふむ考究が、考えられる。要は、ある評価基準で見た場合、どの提携状態が「より良いか」がさだまるが、その評価基準自体が、単純な協力ゲームの文脈ですら、きわめて相対的に成立して しまう事が重要と考えられる。本文脈は、様相論理のアプリケーションでもあり、現在、いくつかの学会/雑誌への発表を計画している。 さらに、次年度から、井上(会社法)が加わる予定である。神楽岡と井上はそれぞれ、ファイナンス、会社法分野におけるゲーム理論を適用した研究のサーベイ、および荒田とともにモデル設計を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
初年度の研究について、当初購入予定であった洋書が年度内に入手できなかったため。 次年度に購入予定。
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