研究実績の概要 |
挑戦的萌芽研究(2013-2015)は「財務諸表監査における監査人の判断と懐疑主義」(2010-2012: 以下「2010年研究」と称する)の研究成果を受けて行われた。2010年研究の成果は、アメリカ会計学会のStudies in Accounting Seriesに、モノグラフ原稿として審査請求された(2014年5月)。原稿は、会計研究諮問委員会による審査合格後、3人による覆面審査に移り、その結果、positive, negative, そしてagainstの評価を得たが、結果としては不採択となった。提出原稿の作成に際して指導を受けた米国の2名の教授からのアドバイス──モノグラフ原稿をジャーナルタイプの原稿に圧縮・修正し、しかるべきジャーナルに投稿したらどうか──を受け、2014-2015年にわたる作業は、すべて、当初の原稿を論文形式に圧縮し、さらに、上述の審査結果で得た貴重なコメントを考慮にして書き直すという形で行われ、その結果はAn Inquiry into the Concept of Professional Skepticism in a Financial Statement Audit という表題の論文として結実した。この論文原稿は2015年に11月に正式な審査に入り、desk reviewを経て、現在(2016年3月末時点で)2名による覆面審査が継続中である。この論文では、懐疑の幅(an epistemic width)と懐疑の深度(an epistemic depth)という基本軸がそれぞれ有する2つの補助的操作軸(operational axis)が交差することによって示される4つの面が監査上の懐疑を捉える面としてそれぞれ有効)であるかどうかの検討に加えて、有効として判断された面が有する監査手続上の意味についての考察がなされた。
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