研究課題/領域番号 |
25590110
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
井上 信宏 信州大学, 学術研究院社会科学系, 教授 (40303440)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 地域包括ケア / 生活支援 / 地域づくり |
研究実績の概要 |
本研究は、長野県松本市をフィールドにして、行政や地域住民による高齢者介護における地域包括ケアシステムの構築にかかる取り組みを支援しながら、その取り組み過程を素材に地域包括ケアシステムの構築モデルを考えることを目的としている。これまで、松本市の担当職員、福祉専門職、民間企業、地域住民組織、他大学の研究者への働きかけを行いながら、協力者と共に高齢期の生活支援、高齢者介護、それらに関わるまちづくりなどの学習を重ね、地域や専門職のネットワーク構築を試みてきた。 2015年度の研究成果は、第一に、前年度に組織化した「まつもと・地域包括ケアシステム研究会」をもとに、松本市の担当職員、行政保健師、健康運動指導士、民間企業(福祉施設)の施設長、大手製薬会社の営業担当、松本市のNPO職員、沖縄県浦添市の民間企業保健師らを組織化し、松本市の地域包括ケアを考える研究会を定期的(月1回)に開催することになった。 第二に、2015年度には松本市の行政が全市的な取り組みとして地域包括ケアシステムの構築を考える作業に取りかかることとなり、その過程で研究代表者が外部専門家として当該作業に関わることができるようになった。松本市の地域包括ケアシステムの構築事業の方向性と研究代表者の問題意識のすり合わせを行うなかで、研究代表者は地域包括ケアシステムの従来モデルをよりシンプルにしたシステム構築のための4つの指標を示した。現在、その指標に基づくシステム構築のプロシージャーを関係者間で検討している。 第三に、松本市の35の行政区のうち、J地区、Ko地区、Ka地区の地域組織の代表者、当該地区担当の保健師や行政職員らと意見交換を行いながら、当該地区での地域づくりに地域包括ケアシステムの機能を反映させるための取り組みを進めることができるようになったところである。 第四に、松本市以外の先進地域の調査も併せて実施している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、研究代表者が松本市の当事者らの取り組みに働きかけながら、そこでの学習や協働を通じて、松本市あるいは行政地区に最適な地域包括ケアシステムの構築を推進することが研究推進のプラットフォームとなっている。そのため、研究推進の多くが、自治体あるいは行政地区の意思決定や取り組みに依存せざるを得ない。 2014年度の「まつもと・地域包括ケアシステム研究会」をきっかけに、松本市全域の主要な主体との連携がとれるようになり、2015年度のより実質的な研究会を定期的に開催することができるようなった。またこの間、当該研究の成果の一部が論文や報告にまとめられ、システム構築を考えるためのよりシンプルなモデルが示せたために、行政の担当部署とのつながりが構築でき、具体的な地域との連携も図られてきた。その結果、当該研究がフィールドとするエリアが拡大し、より多くの主体の協力が得られるようになったために、研究の進捗状況が研究者の意思を超えて動いているのが現状である。 しかしそうした遅れは、本研究にとってはむしろ望ましい状況と考えている。第一に、地域包括ケアシステムの構築の実際が手間のかかる作業であることを明らかにしており、研究代表者がその渦中で支援を行う機会を得られているためである。第二に、2015年度に行政の取り組みが加速化されたために、政策的にも一定の成果が見られる段階に立ち会えているためである。第三に、本研究の成果の一部が、行政や地域の取り組みに活かせる機会を得ているためである。 こうしたことを踏まえて、本研究をあと1年延長して実施することにした。
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今後の研究の推進方策 |
2015年度の本研究において、地域包括ケアシステムの構築の行政地区での取り組みと行政の支援が前進し、研究代表者もその支援に協力できる関係が構築できた。本研究を1年間延長することで、これまでの研究過程で構築した関係を活かしながら、具体的な取り組みへのコミットメットを重ね、よりスムーズなシステム構築のモデルを模索すること考えている。 2016年度の取り組みとしては、第一に、毎月開催してきた研究会を今後も継続し、関係者間の問題意識のすり合わせを行うだけではなく、研究会参加メンバーとともに地区ごとに最適な地域包括ケアシステムの構築を進めるためのプロシージャーを考えたい。第二に、松本市の行政政策とのリンクを図り、他地域への波及できるモデルを考えたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究実績の概要、現在までの達成度に記したように、研究のフィールドとなる自治体および地域との取り組みが深まることで、研究の進捗状況が地域への支援と並行せざるを得ず、そのために個別の取り組みの遂行に時間がかかることになった。なかんづく、毎月開催する研究会は、外部講師の招聘機会とそれをもとにした意見交換の機会を別に開催することにしたことから、外部講師招聘の回数が少なくなったために次年度使用額が発生することになった。
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次年度使用額の使用計画 |
延長の理由は、地域への支援を並行させながら本研究を進めなければならないところにある。なかでも「研究会」は、他地域へ波及させるための情報収集と情報共有、キーパーソンの育成の機会である。次年度使用の経費は「研究会」を遂行するための費用、すなわち講師謝金、講師招聘の交通費、研究会を開催するための研究打ち合わせの交通費、研究会の記録作成費用等に使用する。
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