研究課題/領域番号 |
25590115
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
中村 則弘 愛媛大学, 法文学部, 教授 (10192676)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | アジア社会 / 非一神教 / 曼荼羅 |
研究概要 |
分析枠組みの再検討を行った。『四書五経』、『荘子内外雑編』および『大パリニッバーナ経』、『大日経・金光頂経』、『華厳経』、『中論』を中心としたこれまでの分析概念をさらに深める作業を行った。また、欧米の社会学理論をアジアからみた社会学という視座からの位置づけを行った。これらの作業を行う中で、改めて曼荼羅の位置づけについて追加検討する必要が認められた。そのため、鶴見和子、南方熊楠の研究についての批判的検討を集中的行った。 資料調査、聞き取り調査に関しては、日本における曼荼羅的世界の解明ということに力点をおいておこなった。とくに、高野山金剛峰寺におけるそれらは、極めて意義深いものがあった。 これら一連の作業・検討および調査から、曼荼羅を重視する密教の世界は、顕教の世界と一対をなしていることの重要性が確認できた。このことは、曼荼羅に示される世界観は実のところ、顕教・密教という両義的世界の部分をなすものであり、相応の限定性をもってとらえなければならないという新な知見を得ることにつながった。また、その世界観は両義性の一方を構成する「語らることが忌避される世界」と密接につながっていること、流動する世界の把握方法と関連していることも明らかにできた。これらの内容は、アジア的な社会観を考える上で、新たな地平を開く内容につながっている。 本年度の研究成果については、日中社会学会大会における研究報告に活かすことができた。また、関連する内容を論文として刊行した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
分析枠組みの検討、アジア的世界観の検討、欧米の社会学理論の検討という目的については、大きな進捗をみることができた。また、曼荼羅という重要な内容について、多くの新たな知見を得ることができた。 そもそも予定していた海外での調査などについては、本年度は行うことができなかった。しかし、日本に調査対象を集約したからこそ、先の知見を得ることができたと考えている。研究の展開にあわせた、正鵠を得た対応であったと判断している。 以上の内容から、おおむね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画の大きな変更などはない。ただ、平成25年度は日本での調査を集中して行ったため、今後については海外調査について迅速な対応が必要となる。また、同年度の知見を踏まえれば、調査対象地の設定などについて、若干の再検討を行う必要が認められる。 これらは特段の変更や課題を伴うものではなく、いわば微調整の範囲を越えるものではない。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究進展の状況から、調査研究を日本におけるそれに集中したためである。そのため海外での調査研究などに関して、次年度使用が生じた。ただし、これは至極妥当な対応であったことは先に述べた通りである。 ネパール、カンボジア、中国、台湾、香港、および日本において調査研究を行う。また、フランスないしはオランダにて研究検討会を開催する。 ただし、調査地および検討会の実施地について、研究進展の状況から若干の変更もあり得ることは先に示した通りである。
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