研究課題/領域番号 |
25590115
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
中村 則弘 愛媛大学, 法文学部, 教授 (10192676)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | アジア社会 / 非一神教世界 / 社会学理論 / 両義性 / 流動性 |
研究実績の概要 |
グローバリズムの進展のなか、欧米の社会学理論に対して、アジア非一神教世界の知・知の体系にもとづく理論構築を行うための研究を実施した。本年度は古典的な欧米社会学理論の批判的検討と台湾、ネパール、カンボジアを中心とした諸既存データの分析作業を行った。 前者についてはK.マルクス、M.ウェーバー、E.デュルケーム、G.ジンメルの理論を対象とし、オリエンタリズム的指向の度合い、およびギリシア・ローマ精神およびキリスト教精神との関連を軸とした検討が主たる内容となった。そのなかから、多かれ少なかれではあるが、これら諸理論はアジア的な思考体系と社会理解の基盤そのものを異にしていることを明らかにした。一連の知見は、アジアからの社会学理論構築の端緒を捉えたものと位置づけることができた。 後者については、台湾高雄市および宜蘭県、ネパール・カトマンズ市、カンボジア・プノンペン市で行った宗教、価値意識を主内容とする聞き取り調査の分析検討である。そのいずれでも、異なる価値体系の習合、共存が顕著にみられていた。これは、両義性、流動性という本研究のアジア非一神教世界を捉える枠組みに合致するものであった。ただし、台湾とネパールの場合では習合、共存の在り方に一定の相違がみられており、これはアジア内部での多様性を示すものとして理解できた。なお、カンボジアについて、かつてポルポト政権下で生じた大虐殺などは、こうした習合や共存の拒絶から生じたものであったことを明らかにできた。これはとりもなおさず、アジア非一神教世界が内包する脆弱性を示すものに他ならないと位置づけることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
既存データの分析に時間を要したためである。このことが達成度を下げた原因である。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に遅れを生じた東南アジア・南アジアでの資料調査、聞き取り調査を集中的に行うこととする。あわせて、日本、台湾における調査も実施する。一方で、種々の研究の取り纏め作業に精力を傾注する。
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次年度使用額が生じた理由 |
東南アジア・南アジアに関する既存データの分析に時間を要し、新たな資料調査、聞き取り調査がきなかったためである。また、日本、東アジアにおける調査の遅れも一因となった。
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次年度使用額の使用計画 |
昨年度に遅れを生じた東南アジア・南アジアでの資料調査、聞き取り調査を集中的に行うこととする。ネパールとカンボジアを実施対象としている。ただし、ネパールについては、地震の影響を勘案してのこととなる。必要に応じて、対象地をインドに変更する。あわせて、日本、台湾における調査も実施する。日本については、大阪、松山、福井などが対象となる。台湾については、高雄、宜蘭を対象とする。
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