研究課題/領域番号 |
25590115
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
中村 則弘 愛媛大学, 法文学部, 教授 (10192676)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | アジア社会 / 非一神教世界 / 社会学理論 / 両義性 / 流動性 / 有機体的自然観 |
研究実績の概要 |
アジア非一神教世界の社会知や知の体系にもとづく理論構築を行うための研究を,本年度は環境社会領域を中心として実施した。そこでは,とく文明論的視角と価値意識に着目することとした。 E.F.シュマッハ―、レオポルド・コール、サティシュ・クマール、I.イリイチ,さらにはK.ポランニーらが暗黙の前提としていた価値意識についての理論的整理を行うとともに,宇井純や中岡哲郎,小島麗津,玉野井芳郎らの議論から環境領域との関連での位置づけを行った。その上で,論語,荘子,老子などの中国思想,道徳経や涅槃経などの仏典の検討作業に取り組んだ。 一方で,J.ニーダムによる中国科学史・中国文明に関する研究およびB.ウォードの人間居住に関する研究の検討作業を行いつつ,中国などで以前に実施した現地調査によって得られた諸データから,アジアにおける有機体的自然観や文明観,価値意識が現代社会においてもつ意味を明らかにした。 これら一連の検討から,アジアからの社会学の考える上で,とくに現地実証を踏まえた理論を提示しようとするならば。環境領域における文明論・価値意識と関連する内容は,その重要な柱の一つになるという知見を得ることができた。実証を踏まえた理論提示を行おうとする本研究においては,これは大きな成果である。ただし,ネパール地震,高雄地震の影響から予定していた研究を十分に行うことができなかったという問題が残されてしまったことも,率直に記しておきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
ネパールと台湾における地震の影響である。ネパールの地震では,カトマンズとカトマンズ近郊の調査予定地が,大打撃を受けた。その復旧にも多大な期間を要することとなった。そのため,必要な現地調査について,予定していた時期はもとより,年度内での実施すら困難となった。台湾での現地調査についても,台南市,高雄市・美濃区での現地調査を予定していたのだが,調査予定時期に被災地に,地域によっては震源地となってしまい,実施が不可能となった。研究の遅延はひとえに,これら自然災害の影響のためである。
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今後の研究の推進方策 |
台湾の各現地については,もはや調査実施に問題はないことを確認している。ネパールの各調査予定地についても,復旧はある程度進み,現地の人々の生活もかなり落ち着いていることを確信している。 研究の遅延については,十分に回復可能であると判断している。
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次年度使用額が生じた理由 |
ネパールおよび台湾において発生した大地震の影響である。地震発生が調査予定時期と重なり,さらに前者については復旧の大幅な遅れがあった。そのため,年度内調査が不可能となり,関連する研究作業も中断せざるを得なかった。
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次年度使用額の使用計画 |
ネパールおよび台湾での現地調査を実施する。本研究と関連する資料収集や研究打ち合わせを継続して行う。あわせて,最終成果の刊行作業にも取り組む。
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