研究課題/領域番号 |
25590117
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研究機関 | 県立広島大学 |
研究代表者 |
澤田 千恵 県立広島大学, 保健福祉学部, 准教授 (20336910)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 薬害 / 処方薬依存 / 精神科転帰研究 / 精神医療被害 |
研究実績の概要 |
被害当事者に対する聞き取り調査を継続した。今年度、新規に3名からの聞き取り調査を行い、2名には2回目の聞き取りを実施した。現在までで8名からの聞き取り調査を終えた。 調査データの詳しい分析はこれからであるが、この研究を通じておよそ以下のことが指摘できるだろう。従来、不適正処方の問題に関しては、医師の責任のみならず、患者にも責任があるとされてきた。患者が薬物に依存しているために、医師は処方せざるを得ない、薬を減らせないなどの医療側の訴えは、患者への不当な非難であり、医療側による責任転嫁である。患者は治療と信じるからこそ服用しており、薬物の効果に疑問を感じた場合に、医師、薬剤師、福祉関係者などから服薬を続けるよう促されている場合が多い。 現在、精神科処方薬による薬物依存者の増加が報告されているが、処方薬依存の問題は、依存症と見なされていない患者の間にも相当に広がっている可能性を本調査から明らかにできるだろう。通常の診療範囲内であれば、患者は医師の指示通りに服薬を続けている限り、処方薬依存症とは見なされにくい。だが、ひとたび過量服薬等の問題を起こすと、薬物依存患者とか人格障害等のレッテルを貼られる。また、服薬治療によって育児や就労の能力が低下し、育児ネグレクトや解雇、離婚などの否定的結果がもたらされている事例が多く見られた。 精神科の治療において問題にすべきは、医師の処方権の乱用である。そして、製薬会社と精神医学が結託して作り出した、生物学的精神医学という仮説に基づいた精神疾患の定義や薬物治療の正当化によって、薬害患者が歴史的にも多く生み出されていることである。精神科領域においては、薬害が精神疾患と混同され続けている点が問題である。薬害の結果を患者の病気やパーソナリティに帰責していくしくみにより、精神医療被害が表面化しづらくなっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度の前半において入院治療を要したため、一定期間、研究を実施できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
あと数名から聞き取りを実施する予定である。インタビューデータの分析や考察を行っていく。また、治療を通じての社会的転帰の悪化過程と処方との関連についても分析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度の前半に入院治療を要したため一定期間研究を実施できなかった。そのため聞き取り調査計画がやや遅延しており、費用を繰り越すことになった。
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次年度使用額の使用計画 |
聞き取り調査の費用(旅費、謝金、テープおこし費用等)や共同研究者との会議や打ち合わせ等に使用する。
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