• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2013 年度 実施状況報告書

社会・精神・身体に相関する音楽的共同性の研究

研究課題

研究課題/領域番号 25590120
研究種目

挑戦的萌芽研究

研究機関京都学園大学

研究代表者

岡崎 宏樹  京都学園大学, 人間文化学部, 准教授 (00329921)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワード共同性 / 音楽 / 共同体 / 音楽療法 / リズム論
研究概要

本研究の目的は、音楽の場に生成する共同態を分析することを通じ、諸単位の多様性と統一性を両立させる《音楽的共同性》の原理を理論化することにある。研究期間は3カ年。準備研究・実証的調査・理論考察・応用可能性の探求の4段階で構成される。2013年度は準備研究の期間と位置づけ、主に方法論と共同性理論に関する文献研究を進め、社会学における共同体論や音楽的コミュニケーションに関する学説研究、社会学以外の領域の諸研究(音楽療法・音楽哲学・サウンドスケープ論)を「共同性の創出」という観点から考察する作業などに取り組んだ。
方法論の探求では、M.ポランニーの暗黙知理論に基づく音楽体験の把握について理論的検討を深めた。ここでは「棲みこみ」概念の重要性に着目し、これを音楽体験の分析に応用する試みに取り組んだ。ただしポランニー理論は基本的に単数主体の認識モデルであり、複数主体による共同的体験の分析のための理論枠組みを開発する必要性がある。またポランニー理論では、記憶やイメージの分析に関して不十分な点がみられることも明らかになった。
次の作業として、ベルクソンの「持続」概念に基づく音楽体験の分析方法を検討した。これにおいて参考となったのは、ジゼール・ブルレの音楽美学と作田啓一の人間学である。ブルレの学説は、リズムと生命の関係を論じたクラーゲスの議論の批判的読解として重要な意義があった。また、われわれは、作田の「溶解体験」を使って音楽体験を考察したが、これによって体験と価値意識との関係を考えるうえで重要な示唆を与えた。共同体論や音楽的コミュニケーション、音楽療法に関する研究では、行為の同調においてリズムが果たす働きに注目した考察を進めた。
なお以上の考察は文献に基づく予備研究であり、次年度以降の調査研究のデータをふまえて、修正し深化させる必要がある。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

初年度の第一課題は方法論と共同性理論に関する文献研究であったが、これについては、おおむね順調に進められたといえる。特に、ポランニー理論に基づく音楽体験の分析方法の検討に関しては、一定の理論モデルを素描できるところまで進めることができた。ただし、この理論枠組みでは、複数の主体の共同体験や記憶やイメージの働きに関する分析に不十分な点があることがわかった。そこで、ベルクソンに基づく別の理論モデルの検討へと進んだが、抽象度の高い哲学理論を経験的研究へと接続する作業は非常に難しく、考察にかなりの時間を要した。
このため当初計画では年度終わりに、次年度の研究の準備として、音楽家や音楽療法士への予備調査を計画していたが、時間の都合で、音楽療法士らへの調査は実施できなかった。もっともこの調査は、2014年度の調査研究で実施する予定なので、この小さな遅れが本研究全体に大きく影響することはないと思われる。

今後の研究の推進方策

平成26年度は、文献研究と同時に、実証的調査を進める。調査研究で主として取り組むのは、音楽家に対するインタビュー調査、音楽療法士‐患者に対するインタビュー調査、音楽を通じた都市創生の取り組みの調査、の3つである。音楽家については、関西圏で活躍する現役ミュージシャンなどを調査対象とし、音楽療法に関してはALS患者に協力を依頼したい。都市創生に関しては、震災からの復興をめざし、音楽を通じた都市創生の取り組みが多数展開している事例に着目する。いずれの調査も前年度に検討した方法論に基づき、良質なデータの収集をめざす。
なお、都市創生に関する研究は、当初計画では、福島を中心に調査する予定であったが、所属機関が兵庫県に移動したこともあり、1995年に震災を経験した神戸市の事例も視野に入れて調査研究を進めることにしたい。

次年度の研究費の使用計画

本研究の研究期間は3カ年、準備研究・実証的調査・理論考察・応用可能性の探求の4段階で構成される。2013年度は準備研究の期間と位置づけ、文献研究を中心に研究を進め、一定の成果を得たが、理論的考察の作業に予定以上の時間がかかったため、当初計画では年度終わりに予定していた音楽療法関係者らへの予備調査を実施するができなかった。このため使用を予定していた旅費等の費用を次年度に使用することとした。
2014年度は、以下の3点を中心に助成金を使用する計画である。(1)消耗品:社会学・音楽療法・哲学・音楽学・神戸のまちづくり等に関連する図書・論文を購入する。またデータ保存用のメディアなどAOサプライを購入する予定である。(2)旅費(国内旅費):音楽家や音楽療法関係者へのインタビュー調査のために旅費を使用する。また都市創生の取り組みを調査するため、神戸市および福島県への出張に旅費を使用する予定である。また関連する学会や研究会への出張旅費にも助成金を活用する。(3)人件費・謝金:インタビュー調査の対象者に対し、1回につき3000円の謝礼を支払う予定である。計画では、音楽家20名、音楽療法関係者10名、音楽療法の患者10名、まちづくり関係者10名(いずれも延べ人数)に調査を行なうこととしているが、調査の進行状況や対象者の状況等によって人数や使用額が変動する可能性がある。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2014

すべて 図書 (1件)

  • [図書] 現代文化を学ぶ人のために 〔全訂新版〕2014

    • 著者名/発表者名
      井上俊、近森高明、加藤裕治、岡田朋之、山田真茂留、松浦雄介、土井隆義、長谷正人、岡崎宏樹、瓜生吉則、野村明宏、河原和枝、清水諭、牟田和恵、永井良和
    • 総ページ数
      印刷中
    • 出版者
      世界思想社

URL: 

公開日: 2015-05-28  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi