本研究は沖縄離島(先島諸島)における地域移動を流出側、流入側の両者の要因から比較検討することで、持続可能な離島社会の成立条件を抽出することを目的として実施した。自治体担当部局での資料収集から地域移動の基底にある産業や住民福祉、教育機会の現状を把握した。さらに住民等への調査から以下の状況が明らかになった。 地域の基幹産業である農業については、基幹作物であるサトウキビよりも、畜産、野菜や果樹の栽培と直販に取り組む農業においてU、Iターンによる後継者が確保されている。漁業では、資源枯渇が進む一方で、漁業者の世代交代が進んでおり、伝統的な漁法の継承や観光漁業の取り組みにU・Iターン者が参入している。 高齢者福祉に関しては、介護施設や在宅介護への取り組みが進められているが地域格差が見られ、施設入所のために居住地を離れる高齢者が存在する。また、専門介護職にIターン者が多い。地元高校では、多くの卒業生が進学はもちろん就職のためにも沖縄本島や日本本土に移住している。地元に戻りたい若者も多いが、彼らにとって望ましい就業機会の少ないことがUターンを困難としている。逆に農業系の高校では、地元での就業を念頭に必要な資格を取得する生徒も多い。地元の織物協同組合では、伝統工芸を継承する努力は継続しているものの、それが一つの産業として就業の場となることは困難である。 また近畿八重山郷友会では、会員の高齢化が進んでいる。望郷の念はあるが、生活の基盤が関西に形成されているため、帰郷できない人々が多い。 離島社会において、地元の資源や伝統を活用した就業機会の創出が課題であることが確認された。
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