研究課題/領域番号 |
25590127
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 兵庫大学 |
研究代表者 |
牧田 満知子 兵庫大学, その他部局等, 教授 (80331784)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 安楽死 / 尊厳死 / 緩和ケア / 終末期医療 / 死生観 / ホスピス |
研究概要 |
平成25年度はスイスでの調査を中心に研究を進めた。計画ではオランダの調査を予定していたが、牧田が渡欧する時期にV.トール、長山の予定がつかなかった。秋季(11月中旬)が再度予定されたが牧田の授業の関係で実現せず、資料のみの授受となった。 5月にスイス大使館(東京都)で緩和ケアおよび安楽死問題に詳しい研究者の紹介をお願いし、承諾の得られた10名余のメールアドレスを教えていただいた。8月末に渡欧し、WHO職員で公衆衛生問題担当の専門家の野崎慎仁郎先生と合流し、ホスピスでの緩和ケアの実態調査を行った。その後チューリッヒに移動し、大使館で紹介のあったチューリッヒ大学のシュワルツネガー博士と面談。博士の行っている安楽死調査の概要を教えていただいた。また博士の紹介で、ベルン、バーゼルでの安楽死の聞き取り(Exit)を行った。これらの結果は第86回日本社会学会全国大会(於:慶応義塾大学/ 10/12,13)において「権利としての死」というテーマで発表した。また連携研究者の内田亨教授とともに「緩和医療と安楽死論争ースイスにおける安楽死容認度の分析ー」として研究紀要に上梓した。 スイスの調査と平行して、日本の死生観の調査も行った。これは、なぜ日本で安楽死、尊厳死が認められないのかを、日本人の意識構造(文化/宗教/慣習など)から探ろうとする試みで、この踏査結果を積み上げていくことでオランダ、スイスの安楽死容認の構造を重層的に読み解く事ができると思うからである。この研究の成果は第26次東北アジア文化学会(於:開南大学/中華民国/5/26)において「日本の死生観と終末期医療」というテーマで発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的の一つはスイスにおける安楽死の実態を調査することである。本格的な調査は2014年度であるが、2013年度はそのための伏線を強固にし、次年度の調査へと架橋する事ができたのではないかと考える。貴重なキーパーソンも得られ、以降もメールで頻繁な交流を行っている。 2014年度はオランダ、ベルギーも射程に入れ、やや調査の範囲を拡大させ、比較可能な多くの調査結果を得たいと計画している。両国の安楽死の現状と課題点については、すでに資料的にはかなり補足できている。従って26年度は現地調査を遂行する事になるが、研究代表者(牧田)の十分な海外調査の時間が確保できるのかどうかが課題である。
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今後の研究の推進方策 |
同じ「安楽死」を扱いながら、オランダは「法」による規定に基づき「死」を管理し、積極的安楽死もDue Careをクリアすれば合法である。これに比してスイスは、積極的安楽死は処罰の対象であるが、「利己的」な目的でない自殺幇助(消極的安楽死)は処罰の対象とはならない。こうした両者の相違を明確にしつつ、論点を次の3点に絞り精査してく。 まず、「認知症」の場合はどうなるのかである。認知症の程度に揺らぎがあるため明確な決定は困難であるが、「本人の意思決定」の有無という意味においても学術的に興味のあるテーマであり調査したい。 2点目は「精神的苦痛」の解釈をめぐる客観的判断が可能なのか否かという課題を、事例、聞き取り調査などにより紡いでいきたい。 3点目はスイスの渡航自殺のケースである。この調査のためにはオランダ・スイス以外の国、例えば英国、フランスで聞き取り調査をする必要がある。今年を含めて2年である程度まで結果が出せるのか現在模索中である。
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次年度の研究費の使用計画 |
2013年度は予定していたオランダの調査ができず、そのため人件費・謝金が発生しなかった。資料収集に関しては既に連携研究者からの助力を得ていたが、会計年度に間に合わず謝金に算定されなかった。2013年度で使用できなかった分は、次年度(2014年度)の、やや長期的、かつ広範囲の調査に向けて意味のある使用へとつなげたい。 夏季にオランダ/ ベルギーでの聞き取り調査。フロニンゲン大学のV.トール、翻訳家の長山らとの共同調査を予定している。旅費および研究協力者に対する人件費、調査に関わって下さる方々への謝金等が発生する。さらに夏季から秋季にはスイスでの調査をよていしており、ここでも協力者のWHO職員野崎、チューリッヒ大学のC.シュワルツネガー、そして多くの調査協力者への謝金が発生するよていである。
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