本研究では世界に先駆けて「安楽死法」を成立させたオランダと、すでにある刑法115条(1942年)の解釈によって「安楽死」を認めているスイスの類似点と相違点を、歴史的な沿革、事例の検証および近隣諸国の「安楽死」に対する法制度との関係を通して明らかにし、海外からの越境自殺幇助志願者を受け入れるスイスの民間機関の存在と送り込む英国の人権の擁護の問題を検証し、死の自己決定の帰属問題を考察した。論点は「耐え難い苦痛」の解釈、死の「自己決定」が法による「他者決定」へと転換される理不尽、および「認知症」と宣告された場合の「自己決定」の権利とその解釈の問題である。
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