本研究の期間は2年であり、基礎的な理論研究と探索的な調査研究から成り立っていた。期間全体を通した課題として、1.対話的行為の理論の整理、2.地域を基盤としたソーシャルワークの実践事例の収集、検討、3.対話的行為の理論を組み込んだ実践モデルの構築があった。 1について、対話的行為の理論は社会理論に出自があり、地域福祉から生まれてきたわけではない。したがって、その概念の精査やそれを地域福祉で援用するための配慮点について整理する必要があった。これに関しては、対話的行為の理論の基礎概念の検討とそれをわが国の地域福祉、地域を基盤としたソーシャルワークで活用するための整理を行うことができた。2は、地域を基盤としたソーシャルワークの実践的な事例を得るとが目的であった。結果的に大阪府下(堺市、東大阪市、吹田市)での取り組みについて事例集を収集することができた。これをもとに地域を基盤とするソーシャルワークでの対話的行為の活用の状況を把握した。3の地域を基盤とするソーシャルワークのモデル構築は、当初、個別支援、地域の住民活動、自治体というそれぞれのレベルで検討する予定であった。しかし、自治体のレベルまでは現状の事例では難しく、地域の住民活動を含む個別支援中心の対話的行為のモデルを構築することに留まった。 以上の3つの課題を考察することで、地域を基盤とするソーシャルワークでの対話的行為の活用実態をもとにプロセス等の提示を行うことができた。ただし、その影響や具体的活用方法の提示については至らなかった。最終年度である平成26年度の取り組みとしては、考察内容を現場にフィードバックし、意見交換を行い、検討を深めていく作業やまとめを含む総合的考察をして、対話的行為を活用するモデルを構築することができた。
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