研究課題/領域番号 |
25590134
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
関川 芳孝 大阪府立大学, 人間社会学部, 教授 (10206625)
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研究分担者 |
梅田 直美 奈良県立大学, 地域創造学部, 講師 (60618875)
木曽 陽子 関西国際大学, 教育学部, 講師 (80735209)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 公立保育所 / 民間移管 / 公的保育の継承 / 公共性の変容 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、市町村において進められている公立保育所の民営化について焦点を当て、移管後も保護者・地域から信頼される保育園として継承させるため、公共性の高い経営モデルの開発をめざしている。今年度は、政令市である大阪市、堺市、神戸市において既に公立保育所の移管を受けた社会福祉法人に対し、アンケート調査およびインタビュー調査を行った。 アンケート調査からは、公立保育所と民間保育園の間には保育に関する考え方の違いがあり、その違いを互いに理解する上での困難が引継ぎプロセスにおけるトラブルにつながるとともに、公立保育所が行ってきた保育を継承していく上での障壁となっていることがわかった。 また、民間の保育園では地域貢献活動の実施率が公立の時に比べて顕著に高まり、「保育の公共性」が主に地域との関わりのなかに見出されていることが明らかになった。一方で、これまで公立保育所が行ってきた「平等」「一斉」といった考え方にもとづく保育は、個別的、柔軟的な考え方にもとづく保育にシフトされており、公立と民間では「保育の公共性」の捉え方が異なっていることも明らかになった。 インタビュー調査からは、公的保育の内容が必ずしも十分に明確にされていないこともあって、保育内容の継承がされていないことが明らかになった。引き継ぎ期間中であっても、保育環境の充実など保育の質を向上させるものについては、変更することも許容されていた。移管元の保育士が関与した形で引き継ぎが行われるが、引き継ぎの目的は、移管において保育の質が低下するのではないかという保護者の不安に配慮するものであって、公的保育の継承にこだわらないように思われた。また、公立保育所が担ってきた保育の公共性は、移管先の民間保育園が考える保育の公共性とはズレがあり、地域とのつながりを重視するものへと変容していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度、分担研究者が体調を崩し、予定していた調査の実施ができなかった。その影響もあって、全体的に当初設定した研究目的及び計画された研究プロセスからみると、いまだ若干遅れている。 今年度は、研究体制を見直し、分担研究者を新たに一人追加し、研究に取り組んだ。研究会を定期的に実施し、アンケート調査およびインタビュー調査を実施した。現在、二つの調査結果を検討しているが、移管後の保育園の運営課題が明らかにできた。これによって得られた研究成果は、5月の日本保育学会にて報告し、論文に取りまとめるめどがたっている。
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今後の研究の推進方策 |
公立保育所の民営化に関わる関係者に対するインタビュー調査を続けたい。当面は、自治体関係者からのインタビュー、公立保育所の引き継ぎにかかわった公立保育士からもインタビュー調査をすることを検討している。移管元が考える移管後の保育園のあり方を把握したい。こうして得られた知見を総合的に考察し、民間移管後の経営モデルの構築に取り掛かり、研究成果を書籍にとりまとめ出版したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度、研究計画が遅れたことによる未使用額が執行されずに残っている。事務補助の経費支出を計上しなかったことも大きい。今年度は、分担者に限定した研究会を行ったため、ゲストスピーカーに対する謝金が必要なかったことも、理由の一つといえる。
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次年度使用額の使用計画 |
研究事務補助の経費、調査研究の実施、ゲストスピーカーを招待して行う研究会の開催、研究報告のとりまとめなどに支出する予定である。
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