研究課題/領域番号 |
25590136
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研究機関 | 県立広島大学 |
研究代表者 |
坊岡 峰子 県立広島大学, 保健福祉学部, 准教授 (80405521)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 失語症 / アプリ / タブレット端末 / STalk2 / 評価 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,話す,聞く,読む,書くといったコミュニケーションの基礎となる4つモダリティーに障害をきたす失語症者のために,文字に代わる視覚シンボルなどをベースとしたコミュニケーション支援用のアプリケーション(以下,アプリ)を開発することである. 本年度は本研究2年目となり,1年目の成果と課題を引き継ぎ実践的に研究を進めた. 使用したタブレットは昨年度同様,AQUOS PAD SH-08E,アプリは本研究の連携研究者である廣冨らによって開発された,音声認識により発言内容をシンボル群に変換して提示するSTalk2を使用した.さらに本年度は,新たに廣冨らと連携をとり,失語症者のAAC(Augmentative and Alternative Communication:拡大代替コミュニケーション)手段として活用されることの多い,コミュニケーションブックのアプリを開発し,紙ベースと比較することで,その有用性と課題などを検討した. タブレットでコミュニケーションブックにかわるアプリを使用する際には,紙ベースのノートのように,物理的にページをめくりながら探すことができない.そのために,失語症者がアプリを活用するためには,より確実なカテゴリーや階層性などの理解,ハード面の使用方法の習得などが必要となる.しかし,失語症者の中には,特異なカテゴリー理解の障害や,高次脳機能障害(視覚認知障害,遂行能力障害,記憶障害,観念失行など)を有することも少なくないため,失語症特有の残存能力の評価が重要になると考えた. そこで本年度は,アプリ使用のための基礎的評価方法の開発の検討も実施した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の成果と課題をふまえ,今年度はさらに実践的データの集積および,失語症者がタブレット端末でアプリを使用するための評価方法の開発を目的に研究をすすめた. その結果,タブレット端末と紙ベースで同様の基礎的評価方法を試作し実施した.さらに,実用的なコミュニケーション手段(AAC手段)として両者を使用した比較と,基礎的評価の結果などを検討した. その結果,失語症者のタブレット端末を使用したコミュニケーションアプリの活用には,失語症の重症度が関連しており,ハード面ではカテゴリーや階層の表示などに改良がが必要であることが示唆された. 以上のように,本年度の研究目的はほぼ達成でき,さらに今後の課題が明らかになった.
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今後の研究の推進方策 |
今年度は本研究の最終年度となり,過去2年間で明らかとなった,失語症が本研究で開発しているコミュニケーション支援アプリを使用するための基礎的評価方法の改良と,アプリの実用的活用にむけた検討およびハード面の改良をすすめていく.さらに,できるだけ多様な失語症のタイプや重症度のデータを蓄積していく予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じたのは,連携研究者など研究への協力者との打ち合わせ場所が,先方大学から本学開催へと変更になったことや,研究データ収集のための患者さんなどに支払う予定の額が人数の減少したことによるものである.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は,継続したデータ収集にかかかる費用(旅費,謝金),およびタブレット端末の通信にかかる費用(その他)に使用する計画である.
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