2013年度に続いて、盲導犬協会の職員である歩行指導員や訓練士と盲導犬ユーザーに対する聞き取り調査を実施した。調査先は、九州盲導犬協会(福岡市)、日本盲導犬協会(横浜市)、日本ライトハウス(大阪府)、中部盲導犬協会(名古屋市)、東日本盲導犬協会(宇都宮市)5箇所であった。また、それぞれの盲導犬協会に属しているユーザーに対しても、盲導犬協会や自宅等において、直接面会し聞き取り調査を実施した。「盲導犬が視覚障害者の自立生活と社会参加に果たす役割」に関しては、ユーザーから、1)行動の自由(外出するなど)が生まれたこと、2)人生に対して前向きになったこと、3)盲導犬という生活のパートーナーがいることで、安心感と心の安らぎや人生の楽しみができたこと、4)他者と交わる機会が増えたこと等の回答が得られた。 しかしながら、未だ盲導犬に対する社会認知が進まない状況(身体障害者補助犬法に対する無知や無関心)にあって、小売店や飲食店等の入店拒否をはじめとして、タクシーの乗車拒否、病院での受診拒否(付き添い等の同伴者がいない等の理由で)、盲導犬に対する不寛容な態度(排泄物処理、抜け毛)、歩行中の通行妨害、心ない発言(視覚障害者への差別的言動)の不快な体験をしていることが明らかとなった。したがって、盲導犬がいることで視覚障害者の社会的自立や社会参加が促進したものの、社会的バリアー(一般社会における無知や無理解、偏見差別)が根強く存在するがゆえに、社会的自立や社会参加が妨げられている面も否定できないことが明らかとなった。盲導犬の育成に関する課題については、盲導犬のニーズはあるものの、盲導犬の質を高めるための取り組み(繁殖)に加えて、盲導犬のユーザーが高齢化している現状から、個々のユーザーのニーズに応じた盲導犬の育成が大きな課題となっている。
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