研究実績の概要 |
本研究の目的は、既に展開過程も一定明らかになり、実践も蓄積されている個人や家族を対象にしたケースマネジメントを基本にして、地域やそこでの組織を対象にしたコミュニティマネジメントの展開過程を明らかにし、両者を連結することで、ソーシャルワーク論の確立を目指すことにある。本研究を進めるにあたって、以下の2つの調査研究を行った。 第1はコミュニティマネジメントを展開していることで著名な地域包括支援センター4か所を対象にして、M-GTAでもって分析をし、コミュニティマネジメントがケースマネジメントと同じようにPDCAサイクルで展開していることを明らかにした。さらに、ケースマネジメントでの個別ニーズへの対応から地域ニーズが抽出され、地域ニーズに対応したコミュニティマネジメントを展開することで、新たな個別ニーズの発見へと、ケースマネジメントとコミュニティマネジメントは循環していることを明らかにした。 第2の量的研究は、全国1,000箇所の地域包括支援センター管理者を対象に自記式郵送調査を実施し、355票(回収率35.5%)を分析した。コミュニティマネジメントで実施していく機能の実施状況の因子分析から、コミュニティマネジメントの業務は、「地域活動の実施とモニタリング」「地域の情報収集」「地域活動実施準備」「地域活動プランニング「地域アセスメント」」の5つの因子で構造化されていることが示され、ケースマネジメントと同様のPDCAサイクルの要素で構成されていることが分かった。 以上の結果から、ケースマネジメントとコミュニティマネジメントは、個人か地域かの対象は異なるとしても、生活上での課題を導き出し、そこから社会資源に結び付けていくPDCAサイクルであることで共通していることが明らかになった。但し、そこで活用される方法や技術には重点が異なることが分かった。また、両者を一体化するソーシャルワーク論構築の方向付けができた。
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