本研究は、地域住民を主体とした災害対応体制のあり方について、米国の事例を基に研究することを目的とするが、平成25年度から26年度までは自然災害に対する地域住民の対応について調査を進めてきた。平成26年には米国からコミュニティ緊急事態対応チーム(CERTおよびNERT)の専門家を招聘し、東京都港区で住民を対象としたセミナーを開催した。昨今、海外ではテロ活動が活発化し、世界情勢が変化していることから、平成27年度は、人災すなわちテロに対する地域住民の備えを中心に調査活動を行った。その一環として、米国同時多発テロの現場となったニューヨーク州で非常時緊急対策局、コミュニティ緊急事態対応チーム南ハーレム支部、自治体国際化協会ニューヨーク事務所、ワシントンD.C.のServe DCで、両地域の住民がテロなどの人災にどのように備えているかについて調査した。聞き取り調査では、テロ活動への備えとして地域住民に可能なことは少ないが、不審者・不審物に関する住民による通報の増加、通報によって未然に防止されているケース、またテロ以前に銃乱射など銃社会であるアメリカが抱える特有の国内問題について知見を得た。 これまでの研究成果は、東京都港区の住民および大学生を対象とした防災ボランティア養成講座、同区の住民参画によるたかなわ地域防災研究事業、同地域のシニア世代リーダーを養成するチャレンジコミュニティ大学において発表し、地域住民による災害対応の開発に活かしている。日本では東海、東南海、南海地震、南海トラフ巨大震災、首都直下地震など、今後も巨大地震が予測され、災害対策の強化が急務となっていることから、研究期間を通して地域住民を主体とした自助・共助による災害エンパワメント、すなわち災害対応力の向上に働きかけることを急いだ。この研究を通して得られた知見を、今後は学術的な発表を通し、港区外への普及も計っていく。
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