人口高齢化とともに認知症の人の生活支援は喫緊の課題となっている。本研究は、地域における相談窓口である地域包括支援センター等の専門職を対象とした調査を実施し、認知症の人の支援および支援に伴う困難感とそれらの要因を明らかにすることを目的としている。 研究最終年度には、これまで大分県で行った調査結果を詳細に分析しなおした(『社会福祉学』誌に掲載予定)。また、堺市で行った調査結果を第56回社会医学会総会で報告した。さらに、韓国における保健センターおよび老人福祉施設の専門職を対象に行う質問紙調査のための予備的調査を、慶南大学の張允楨准教授とともに行った。 大分県と堺市の調査から、以下のことが明らかになった。地域包括支援センター職員の認知症の人と家族に対する支援では、医療機関との連携を欠かすことができず、連携の度合いが支援実践を規定している。また、センター内での3職種間の連携や定期的事例検討など、センターの業務運営の方法が、認知症の人の支援実践に影響する。認知症の支援に伴う困難感は、業務経験年数が短い職員で高く、また、医療機関の認知症への対応に否定的な現状認識を持っている人ほど支援困難感が高かった。 韓国は、認知症(痴呆)管理法に基づき第2次認知症管理総合計画(2013年~2015年)を策定し、認知症早期検診および予防、認知症の治療と管理、そのためのインフラ整備、家族支援および情報の提供に力を入れている。日本と比べ、認知症の早期発見と治療の継続に重点を置いた政策をとっており、抗認知症薬治療への公費負担を導入している。しかし介護事業や施設サービスの供給量は日本に比べると限定的で、長期療養病床が増加しつつある。保健センターおよび老人福祉施設の専門職を対象に行う質問紙調査は最終年度内に完了できなかったため、今後(平成28年度)実施する予定である。
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