少子高齢化が急速に進む中、世代間対立を回避し、世代間で連帯して社会問題の解決にあたることの必要性が高まっている。これまでの研究は、若年世代の側からの高齢者に対する態度に焦点を当てたものが多かったが、本研究では、高齢者の若年者への態度に焦点を当て、それらを測定するための尺度の開発を行い、若年世代への支援的行動や支援意向との関連を明らかにすることを目的とする。 2014年に、無作為抽出された首都圏(1都3県)在住の60代男女を対象に郵送調査を実施し、813人(回収率54%)より有効回答を得た。調査項目は、先行研究や若年世代から収集した高齢者との交流事例を参考に作成した。 2015年~2016年度は、得られた調査データの分析と公表を行った。Fraboniエイジズム尺度を参考に作成した「若年者への否定的態度」は、確認的因子分析により、若者への「嫌悪・回避」「誹謗」の2つの下位因子から構成されることを確認した。若年世代への支援としては「地域の子育て支援行動尺度」を開発し、自身が20~40代時に年長者から受けた支援の経験が、他世代に対するどのような態度を媒介して、60代となった現在の地域の子育て支援行動に影響を与えるのかを検討した。その結果、年長者からのポジティブな支援の経験は子育て支援行動を高める直接効果をもつ一方、次世代育成・世代継承への関心を反映した「世代性(generativity)」を高め、「(若者への)嫌悪・回避」を低めることで、支援行動を促す間接効果も示された。「誹謗」は子育て支援行動との関連はみられなかった。他方、年長者からの支援経験は「敬老意識」も高めていたが、敬老意識は若年者支援を抑制しておらず、むしろ世代性を介して間接的に支援行動を促していた。本結果は、若い世代への適切な支援は、支援を受けた側も次世代を助けるようになるという好循環を生み出すことを示唆している。
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