研究課題/領域番号 |
25590168
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
深谷 優子 東北大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (00374877)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 読解 / 俳句 / 省略表現 |
研究実績の概要 |
ここ数年来の急激な社会的変化として,高速モバイルインターネット環境およびスマートフォンやタブレット端末といった携帯性に優れた端末の普及がある。これにより読み書き環境は激変したと思われるが,実際の読み書きの心理的過程や産出物については,従来との比較も含めて,十分な解明はなされていない。本研究は,携帯性に優れた端末の普及に伴ってより広範にみられるようになったと考えられる,省略を含む言語表現の読解について,情報の復元・拡充(reinstate, enrich)に焦点を当てて検討を行うものである。 平成25年度は,ICT環境における言語情報の理解に関する研究を概観し,現在大量に発信・受信されている言語情報とは,断片的であり省略が用いられやすいという特徴があり,この点において詩歌との通底性を論じ,詩歌の理解時における情報の復元・拡充過程の解明が,今日的な言語情報の理解にも示唆を与えうるとした。 これをうけて,平成26年度は,省略表現である詩歌のひとつとして,俳句を今日的な言語情報の特徴をもつ言語表現として取り上げて,その復元・拡充過程における受信・発信,すなわち他者とのコミュニケーションがもつ影響とその役割について検討した。大学生を対象としてピアレビュー方式で俳句解釈させた結果,1) 独力での解釈に対する他者評価が高くなかった場合,その後の他者とのコミュニケーションは解釈を変化させる直接的な効果をもつこと,2) 独力での解釈に対する他者評価が高かった場合でも,他者の視点や表現方式などを契機として解釈がさらに変化しうること,3) 他者とのコミュニケーションを契機とした解釈の変化には驚きや興味関心など情動的な価値評価が伴われること,を明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度は,省略表現の理解における情報の復元・拡充の過程について,俳句を今日的な言語情報の特徴をもつ言語表現として取り上げ,その復元・拡充過程において他者とのコミュニケーションの影響について検討し,その結果,一定の知見が得られたため。
|
今後の研究の推進方策 |
平成26年度は,研究2として「省略を含む言語表現の理解過程における復元・拡充のプロセスの記述と分析」を行ったが,その過程のモデルを提案するまでには至らなかった。そのため,平成27年度は,復元・拡充の過程のモデルを提案したうえで,その復元・拡充過程を支援する教授技法について実証的に検討することとする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度は,研究2として「省略を含む言語表現の理解過程における復元・拡充のプロセスの記述と分析」を行ったが,そのモデルを提案するまでには至らなかったため,その学会発表のための旅費等に充てる予定だった分が未使用となった。
|
次年度使用額の使用計画 |
平成26年度は,研究2として「省略を含む言語表現の理解過程における復元・拡充のプロセスの記述と分析」を行ったが,そのモデルを提案するまでには至らなかった。そのため,平成27年度請求額とあわせ,学会発表のための旅費等,平成27年度の研究遂行のために充てる。
|