研究課題/領域番号 |
25590172
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
遠藤 利彦 東京大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (90242106)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | デジタル絵本 / 親子相互作用 / 保育 / 絵本アプリ / 乳幼児 |
研究概要 |
現在、急速なデジタル化の波の中で、乳幼児向けの絵本についても、既に相当数のデジタル版が開発・配信されているが、その子どもの発達に対する影響は、一部、リテラシー発達等への影響を除き、未だほとんど実証的検討に付されてはいない。こうした現状を受けて、本研究は、家庭や保育所等の子どもの生活世界に密着した形でデータを収集することで、デジタル絵本の可能性と陥穽を審らかにすることを企図するものである。本年度は、まず、現実的に絵本アプリがどれだけ、どのような種類のものとして配信されているかに関しての基礎的調査を行った。今回は、iOS(iPhoneおよびiPad)向けに配信されたものに限定したが、一部、教材的なものも含めると、既に700弱のアプリが存在しており、既存の紙媒体絵本のデジタル移行版から完全なオリジナル・アプリまで、その内容は多岐に亘るということが窺えた。価格帯は無料から高額なものでもせいぜい400~500円程度と、紙媒体絵本に比すれば相対的に格安であり、また、その形式に関しては、紙媒体の単なるPDF版のようなものは相対的に稀少であり、大半のものには音声、部分動画、色変などの仕掛けが盛り込まれていることが明らかになった。本年度は、これに加えて、3歳児と母親を対象として、家庭訪問による絵本読み状況に関する予備的観察を行った。結果として、紙媒体絵本を用いた母親による読み聞かせに比して、概してデジタル絵本に対する子どもの関心度は薄く、紙媒体絵本からすれば様々に先進的な工夫が凝らされたものでも、子どもの側からすればある意味「つまらないテレビ」として受け取られている感があり、逆に仕掛けがあるにしても、子どもの手指の動きにただ連動して画像が動くなど、むしろ最小限の単純な仕掛けの方が、子どもの自己効力感に訴えることが想定され、相対的に子どもの注意を持続的に集めやすいという可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初、さらに5組の母子を対象に予備的な実験観察を年度内に実施する予定でいたが、子どもの疾病などにより日程調整が難航し、それが叶わなかった。結果的に、子どもの年齢や性別あるいは気質等によって、デジタル絵本や紙媒体絵本に対する反応にいかなる差異が存在し得るかということに関して、当初想定していたほどの知見を得ることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度実施予定で未完遂のままの、デジタル絵本および紙媒体絵本を介した母子相互作用に関する予備的実験観察を平成26年6月までに終えることとし、これまでの全知見の整理を行った上で、平成26年7月以降、家庭における絵本を介した母子相互作用の本調査と保育所におけるデジタル絵本読み聞かせ状況の観察を実施していく予定である。また、養育者および保育者のデジタル絵本および子どものデジタル機器使用に対する意識調査のための質問紙票原案の作成を行い、その予備調査も併せて行うつもりである。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初、国内関連研究者との研究打ち合わせ出張を年度末に予定していたが、それが、先方の都合で叶わず、そのための旅費予定額がそのまま残ってしまったことによる。 国内関連研究者との打ち合わせを、年度の早い段階で行うこととし、そのための旅費に充当することとする。
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