研究課題/領域番号 |
25590180
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
山田 洋子 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 教授 (20123341)
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研究分担者 |
山田 千積 東海大学, 医学部, 講師 (40464226)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ナラティヴ / 医療コミュニケーション / 三項関係 / 糖尿病 / メディエーション / 心理教育プログラム |
研究概要 |
(1)ビジュアル・ナラティヴによる媒介ツールの開発と実施。慢性病患者を対象とした「私と病い」イメージ画によるビジュアル・ナラティヴ調査を実施した。調査は、フェイスシート、インタビュー、イメージ画、三項関係実践からなる。インタビューでは、「私と病いの関係」のライフストーリーを聞く。同様に、A4の用紙3枚に「私と病いの関係(病気になったころ、現在、未来)」について、イメージ画を描いてもらう。三項関係実践は、描いてもらったイメージ画を媒介に、患者と研究者が語り合う。 (2)糖尿病患者のビジュアル・ナラティヴ調査データ収集と分析。糖尿病患者26人(40~70歳代)に調査を行った。おもに次の3つの観点「インタビューによる語りとイメージ画の相違」「イメージ画のもの語り構成の特徴」「糖尿病のイメージ」から結果を分析した。比較のために「腎臓病透析患者」15人(40~70歳代)のデータも集めて分析した。 (3)三項関係ナラティヴモデルによる医療実践と医療現場の改善。イメージ画を媒介に患者と心理学者、医師と心理学者の語り合いにより、医療現場の改善がみられた。 (4)成果の学会発表、ワークショップ、セミナーおよび講演。スイス、ローザンヌで開催された第16回ヨーロッパ発達心理学会の講演“The visual narratives and cultural representations of life-span development”日本発達心理学会ワークショップ「慢性の病いの新しい医療実践と教育を考える;生涯発達と当事者の視点を生かして」、日本発達心理学会発表「『私と病い』のビジュアル・ナラティヴ(1);糖尿病患者のライフストーリー」、医学教育セミナー「三項関係ナラティヴ支援モデルによる医師と患者の教育」、講演「地域の医療・介護を支える『多職種連携力』を持つ中核的専門人材」など多数行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究では、次の5つを目標にしてきた。1)三項関係ナラティヴモデルを構築し、医療現場に実践的な提案を行う。2)「治療的三項関係(医師と患者)」、「医師教育三項関係(経験医師と新参医師)」、「患者教育三項関係(経験患者と新参患者)」など多重の教育機能をモデル化する。3)三項関係の多様な型に応じた媒介ツールを開発する。4)新しい日本発の三項関係ナラティヴモデルを国際発信する。 今年度は大きく進展し、医療現場におけるビジュアル・ナラティヴ調査を実施し、その結果の分析を行った。糖尿病患者だけではなく腎臓病透析患者の調査資料も収集でき、慢性疾患のモデル化に向けて進展した。また、病院に定期的に通い、糖尿病専門医や医療関係者との信頼を得てコラボレーションが急速にすすみ、医療現場に実践的な提言ができるまでに進展した。学会だけではなく、医療教育や研修の場において、積極的に三項関係モデルやビジュアル・ナラティヴの有効性について講演する場も増えて成果が出ている。国際発信についても、前倒しで国際学会での発表と討論をすすめた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、次の研究方向をめざす。1)ビジュアル・ナラティヴ調査結果をさらに分析して、その特徴を明確にして、より幅広い視野から「日本文化の感性・実感を生かした研究方法論」として理論化する。2)多様な「三項関係ナラティヴモデル」を「医療メディエーション」と関連させて理論化し、医療現場に生かせるよう実践的な討論をすすめる。3)「三項関係ナラティヴモデル」と「ビジュアル・ナラティヴ」を日本の学会や研修会やワークショップで幅広く発表し、海外においても国際発信する。
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次年度の研究費の使用計画 |
人件費、謝金などの使用が節約できたので、次年度に繰り越して、学会発信および海外発信のための費用としてより効果的に使用したい。 「三項関係モデル」「ビジュアル・ナラティヴモデル」をより広範囲に利用できるようにするための理論構築のための討論、研究成果の学会発信および海外発信をさらに強化するために出張費の一部にしたい。
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