研究課題/領域番号 |
25590181
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 四国大学 |
研究代表者 |
下坂 剛 四国大学, 生活科学部, 講師 (30390347)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 性的欲求 / インターネット調査 / 異性不安 / 自尊感情 / 半構造化面接 / 修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ |
研究概要 |
初年度の主な目的は,1)一般的な成人男性の性的欲求を測定する尺度を作成し,因子の内容を明らかにし,2)性的欲求を規定する心理的要因や,性生活の状況との関連性を検討することである。初年度は1)は全て完了し,2)の一部が達成できた。 具体的には予備的調査としての半構造化面接を7月~10月にかけて,予定通り実施した。面接対象者は成人男性11名であり,それぞれ1時間程度の面接を実施した。面接では多様な内容の回答が得られ,これを修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチの手法によって質的に分析し,男性の性的欲求の経験に関するモデルを作成した。 次に本調査として,得られた記述から59項目の男性の性的欲求認知を測定する項目を作成した上で,調査会社を通じて匿名によるインターネット調査を2月に実施した。調査対象者は社会人の男性300名(20代~40代)である。作成した性的欲求認知の項目の多くは,パートナーとの性行為経験が前提となっているが,300名のうち53名が性行為の経験がなかったので,実際の分析は247名のデータによった。因子分析の結果,19項目から構成される男性版性的欲求認知尺度が作成された。尺度は4因子で因子名を「深い満足」「自己処理」「性的開示」「浮気衝動」と命名した。全ての信頼性係数は十分な値を示した。構成概念妥当性の検討のため,「異性不安」「自尊感情」との相関を検討したところ,「深い満足」と「自尊感情」,「自己処理」と「異性不安」との間で有意な正の相関がみられた。また,3世代(20代・30代・40代)間で各下位尺度の差を検討したところ,「自己処理」は20代で高く,「性的開示」は40代で低いという結果であった。また,性風俗サービスの利用経験者は141名いたが,利用経験がない群に比べて「性的開示」と「浮気衝動」が強いという結果であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の研究は,予備調査においては全て達成できているが,男性の性的欲求に関する専攻研究が日本でほとんどないことから調査時に仮説生成が難しく,本調査であるインターネット調査では,まずは男性版性的欲求認知尺度の確定を主目的とした。関連する変数との検討を踏まえた上で,2年目に2度目の本調査を実施することに計画を微修正した。そのため,当初予定していた研究目的のうち,「性的欲求を規定する心理的要因や,性生活の状況との関連性を検討すること」は完全には達成されていない。しかし,これは実際の予備調査における面接データを分析する中で,当初仮定していた仮説通りにデータの関連性がみられるか慎重に判断する必要性が生じたためであり,インターネット調査を2段階とすることで,以後の研究において,より着実な成果を挙げうる方法をとった。現時点では既に2回目の本調査の調査計画は作成済みで,所属機関の研究倫理審査委員会に承認を受けたため,現在,調査委託業者による2回目のインターネット調査を実施中である。したがって初年度の予定からは少し遅れがあるものの,最終的には予定通りの研究成果が得られる見通しをもっている。
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今後の研究の推進方策 |
2回目の本調査は5月に実施予定である。調査内容は「男性版性的欲求認知尺度」「モッシャー性的罪悪感尺度10項目版」「相互独立的―相互協調的自己観尺度」「言葉・態度での威嚇項目」「DV加害経験項目」「注目賞賛欲求尺度」「職場ストレッサー尺度」「心理的ストレス反応尺度」「虚偽尺度」である。調査対象者は20代から40代の社会人男性390名を予定し,インターネットで匿名調査を実施する。調査の概要としては,成人男性の性的欲求の認知を規定する要因として,①性的罪悪感と文化的自己観の関連性,②ドメスティックバイオレンスと男性の未熟性の関連性,③ストレス理論との関連性の3点から検討を加える。これらの分析を通じて,男性の性的欲求認知がどのような変数によって説明されるか明らかになるだろう。また,社会生活を送る男性の性的欲求を通じた心理的側面が明らかになることによって,思春期や青年期における男性の性のあり方や性教育の方策等についても,有益な示唆が得られると考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
第一の理由としては,1年目の調査計画のうち本調査の内容について,2回に分けて慎重に行う必要が出てきたため,1回目の本調査の規模を少し小さくしたので,相対的に費用が少なくなったためである。次に第二の理由は,調査時に情報収集と打合せのため,勤務先まで直接出向く予定をしていた心理学研究者との予定が合わず,実際にはメール等での情報交換となったので,旅費が約半分となっているためである。 調査については新たに2回目の本調査を設定したので,当初の予定通りの予算を必要とする見通しである。また旅費については,今後分析によって得られる結果が当初の予定よりも若干多くなる見通しがあり,より多くの国内の学会で研究成果を公表する方針でいるため,こちらも当初の予定通り必要となる見通しをもっている。
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