研究課題/領域番号 |
25590182
|
研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
高橋 恵子 弘前大学, 保健管理センター, 講師 (70281904)
|
研究分担者 |
佐藤 豪 同志社大学, 心理学部, 教授 (90150557)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 生体リズム / 自律神経 / 意識化 / 行動変容 / イマジネーション |
研究実績の概要 |
日内リズムの乱れは抑うつや様々な身体疾患と関連するとの指摘があるが、自律神経系活動をはじめとする内在的な生体リズムは無意識レベルであるため、普段は意識化することがほとんどなく、意志の力による変容が難しい。生活習慣のリズムも内在的なからだのリズムを伴い、ほとんどの場合意識されないまま過去の行動が繰り返されている。大学生の生活リズムの乱れも修正には困難がともなう。 前年度の生活習慣の行動変容の準備状態をつくるコンディショニングでは、常態的に繰り返されている習慣的行動を意識的に捉え直すことで無自覚的な行動リズムの再構成を図った。またその具体的な行動変容では、小さくても個人の歩幅に合った変容を促し、リズムが定着するまで身体行動レベルでこれらを繰り返すことにより一定の効果が認められた。しかし一方では、このような習慣的行動の変容に抵抗する心の声や評価や分析がしばしば阻害的に働き、変容のマイナス要因となることが明らかとなった。 本年度は“いまここでの経験に評価や判断を加えることなく能動的に意識を向ける”マインドフルネスの構えに着目し、その心的構造の枠組みを、心身症研究で使用されるエゴグラムから検討を行った。その結果、マインドフルネスはACと負の相関を示し、外的準拠枠に沿った意志の力による適応努力(がんばり)はむしろ否定的な作用をもたらす一方で、NP、Aの自己受容的でバランスのとれた心理状態は行動変容に肯定的に作用することが示唆された。 マインドフルネスは乱れた生体リズムを修正する心理的な準備状態をつくる上で望ましいマインドセットであると考えられる。今後これらの生体リズムと健康指標との関連を検討し、生体リズムを調える心理生理学的な方法について検討を進める予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度までに生活リズムを調査する集団調査を終え、若者の健康支援における日常の生活リズム形成のための問題点を確認した。習慣的行動変容には心理生理学的レベルでの強い抵抗が伴う。これには意志の力によらない(心理的な評価や批判などに関わりない)マインドフルネスの対応が望ましく、このようなマインドセットをつくる心理生理学的な準備状態の探索が求められる。 毎日の生活習慣でみられるような日内リズムの乱れは、より短い時間周期のリズムから本人の気づきを促すことが可能であり、これにより個人が本来もっている心身の調和状態を取り戻す働きかけを行おうと考えている。現在このような自律神経機能の生体リズムを観察する準備を進めているところであるが、当初の実験計画より遅れている傾向にあるため、今後も研究関係者との連携を密にしながら研究を進めていきたいと考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
自らの生体リズムに気づくことは、見えない心を意識化することにつながる。今後の課題としては生理心理学的な生体リズムと健康との関連を明らかにしセルフコントロールを促してゆくことである。生体リズムの測定には心拍変動の周波数解析による自律神経の機能検査を用いる予定で、現在研究分担者、および機器担当者と検討を進めている。 検討している課題はストレス負荷により人為的な生体リズムの乱れをつくり出し、そこからの回復過程を、生体リズムをモニタリングすることでセルフコントロールするバイオフィードバックの手法を見い出すことである。従来から心身症の治療などで用いられている呼吸法や自律訓練法を活用し、生体リズムを意識化する手法について検討する。また生体リズムと自己誘発的イマジネーションの関連など、創造的な変容過程がもたらす心身の再統合過程について検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度は自律神経機能検査などの調査を見合わせたため、機材に関わるコスト、および被検者や実験協力者らに支払う人件費が削減された。次年度以降、これらの費用を必要な実験経費に充当する予定である。
|
次年度使用額の使用計画 |
生理学的指標を測定する実験機材の運用コスト、および調査に参加する被検者への謝礼、研究協力者への人件費等が必要となる。またこれらの実験の実施や研究打ち合わせのため、複数回の出張を行う経費を見込んでいる。
|