ストレスによる生理的リズムの乱れがもたらす健康障害が問題になっている。体の内部情報に気づきにくい失体感はストレス関連疾患の心身症の基本概念であるが、現代の情報化社会に生きる若者においても例外でない。身体との内部対話の乏しさは、自律神経などの生体リズムの軽視、また身体の変調への気づきにくさを増幅する。 本年度の研究では、心身のリズムを意識化する心と体の揺らぎの共鳴効果がもたらすストレスの軽減効果について検討した。調査の結果、学生らのストレスは当初予想されたより高くSTAIの状態不安が高かった。呼吸や心拍のリズムに気持ちを向けるセルフコントロールにより、介入後はこれらの不安が有意に低下した。特にエゴグラムの順応した子どもの自我状態(AC)の高い群ではより大きな不安の低減効果が示された。また失体感傾向の高い対象者においても不安の低減とリラクセーションが促された。心身の調和が促されるマインドフルネスな呼吸により、若者特有の過敏性やストレスが低減された。 心と体の共鳴を促すからだを通じた心身統合アプローチは、自己理解や対人共感力を高める健康意識の向上に有用であった。また内臓感覚などへの気づきが促されたことにも注目された。言葉で説明しずらい身体からの情報(gut feeling)への気づきは、ストレス低減に効果的であると考えられる。近年注目されるマインドフルネスは、これらの身体性と協応した人体の智慧と考えられる。 自らの身体のリズムを意識化する体験は学生達にとって驚きを伴う新鮮な体験となる。生体リズムを観察する健康意識の向上、身体を通じた生命への気づきは、情報化が進む現代において必要不可欠な資質であり、今後の検討が必要である。
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