研究概要 |
青少年の問題行動の一つである物質使用(喫煙行動・飲酒行動など)のリスクは,12~16歳の時期に高まることが指摘されている。物質使用にはさまざまな要因が複雑に絡んでいるが,物質使用とパーソナリティとの関連が注目されており,パーソナリティが物質使用のリスクとして寄与することが明らかになっている(Bogg & Roberts,2004)。 近年,物質使用のリスクとなるパーソナリティを測定するために,The Substance Use Risk Profile Scale(SURPS)が開発された(Conrod & Woicik,2002)。具体的には,不安感受性(Anxiety Sensitivity),絶望感(Hopelessness),刺激志向性(Impulsivity),衝動性(Sensation Seeking)の4つの下位尺度から構成されている。また,23項目で構成されるSURPSは簡便に使用できることから物質使用のスクリーニングとして適しており,欧米では青少年を対象に,SURPSを使用した物質使用のリスクとなるパーソナリティに関する研究の蓄積が始められている(e.g.,Krank et al.,2011;Woicik et al.,2009)。そこで,本研究の主な目的としては,単体児および双生児を対象にSURPSで測定されるパーソナリティがリスクとなり,青少年の物質使用を予測するかを縦断的に検討する。また,子どもを取り巻く環境要因として,親の行動特徴がどのように関わっているのかについて明らかにすることを目的とした。 平成25年度では,まず,1.薬物乱用教室におけるインタビュー調査による情報収集と,2.中学生を対象にした質問紙調査を行った。その結果,喫煙行動のみられる中学生は絶望感が高い傾向が示され,また飲酒行動のみられる中学生は絶望感と刺激志向性が高いことが認められた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,本研究の目的である縦断的な検討を行うため,本年度と同様の質問紙調査を行う。また,本年度のインタビュー調査による情報収集および質問紙調査のデータ分析の結果を踏まえて,必要である場合には尺度項目の追加と横断的な発達的変化も探るため,当初の計画よりも調査対象者を増やす予定である。必要に応じて,精神医学・教育心理学・心理統計学など他領域の専門家にも知識提供を仰ぎながら研究を遂行する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が生じた主な理由は,本年度予定していた「人件費・謝金」の支出が生じなかったためである。その理由としては,質問紙調査の対象校の学校行事と調査実施の日程調整に時間を要し,当初の予定よりも実施およびデータ入力の時期が遅れてしまった。そのため,1回目の回収を終えた調査票は,研究代表者が回答不備などのチェックも兼ねて一部のデータ入力を完了しているが,残りのデータ入力は,次年度実施される調査票と一緒に依頼する予定である。 次年度は,主に以下のように研究費を使用する予定である。(1)回収された質問紙調査票のデータ分析や研究成果発表のために使用するノートパソコンの購入に要する物品費,(2)調査協力者との打ち合わせ・調査実施や国内外での研究成果発表のための旅費,(3)質問紙調査票のデータ整理・入力のための謝金,(4)その他には,質問紙調査の実施に関わる印刷費・郵送費,複写費,書籍費,英語論文の校閲費・投稿料などに充てる予定である。
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