研究課題/領域番号 |
25590186
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
佐藤 眞一 大阪大学, 人間科学研究科, 教授 (40196241)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 介護職員養成・研修 / 認知症ケア / パーソナルケア / 看取りケア / ボトムアップ型再学習 / 内発的動機づけ / 有能感 / 事例検討 |
研究実績の概要 |
施設管理者・介護職員調査:大阪府内の介護老人福祉施設の管理者に面接調査を行い,介護福祉士資格を有する優秀と考える職員を面接対象として推薦してもらい,コンピテンス,看取り経験等の特徴を聞き取った。その後,推薦された認知症および看取り経験の豊富な介護職員のコンピテンスに関する面接調査を行った。また,認知症に関しては,コンピテンスの重要側面として認知症に関する知識度尺度改訂版を作成し,質問紙調査を行った。看取りに関しては,看取りケア効力感をキーワードに選び,質問紙調査を行った。 事例検討(ケースカンファレンス):ボトムアップ型実践システムを開発するために,2カ所の介護老人福祉施設にて,管理職者,介護職員を含むメンバーによって事例検討会を行った。2012年度より行っていたA施設では2014年度末までに通算24回,各回約2時間の検討会を行った。2013年度から開始したB施設では,同じく各回約2時間,通算8回の事例検討会を行った。事例検討は,パーソナルケアの方法(佐藤,2005)を下敷きに,修正した記録様式に従い,計画カンファレンスおよび評価カンファレンスから構成された。 研究交流:高齢者福祉事業を行う中国大連市の光進グループを訪問し,介護施設を見学するとともに,中国における介護に関するニーズ,介護士養成等について意見交換を行った。次いで,大連医科大学付属大連市中心病院を訪問し,緩和医療病棟の複数の医師と面談し,看取りケアに関する情報収集と意見交換を行った。また,大連市で開催されていた国際老齢産業博覧会に出席し,中国における介護事業,日本および欧米との連携事業等についての情報収集と意見交換を行った。 成果の発表:アメリカ老年学会(GSA),日本老年行動科学会,日本老年社会科学会,認知症ケア学会,日本発達心理学会等にて研究発表を行い,認知症ケア学会誌に論文が掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
面接調査によって,認知症ケアに加えて看取りケアのコンピテンスに関するキーワードを特定することができた。認知症ケアでは知識度と研修後の再学習,看取りケアでは看取りケア効力感をキーワードとして調査を継続している。 また,大阪府社会福祉事業団との研究協定内容がさらに進み,事業団内に設立されたOSJ研修・研究センターとの連携によって,よりスムーズに研究と実践の両者を進めることが可能となった。 認知症と看取りに関する介護職員のボトムアップ型再学習の方法をパーソナルケア法を背景とする3ステップ式ケアプラン策定システムを開発できたため,今後は,トップダウンによる研修後のボトムアップ型再学習の実態を調査すると共に,3ステップ式ケアプラン策定システムによる事例検討を積み重ねるという具体的目標が定まった。
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今後の研究の推進方策 |
大阪府社会福祉事業団OSJ研修・研究センターおよび事業団が管轄する介護老人福祉施設等の協力の下,認知症ケアについてはトップダウン型の研修がより効果的に実践に活かせる方法の検証を目的に,研修前後の仕事へのコミットメントや内発的動機づけの変化と再学習方法の関連性を検討する。看取りケアについては,施設の看取り指針の作成と並行して,看取りケア効力感が実践においてどのような効果を果たすかについて調査を進める。 また,調査等のデータがまとまってきているので,本研究の最終年度である今年度は,アジアオセアニア老年学会議(IAGG),アメリカ老年学会(GSA),日本老年社会科学会,日本老年行動科学会,日本心理学会などで精力的に発表を行うと共に,学会誌等に論文を投稿する予定である。
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