介護職員のボトムアップ型学習のための実践として、2カ所の特別養護老人ホームおよび1カ所のグループホームにおいて、年間を通してオリジナルに開発したパーソナルケア法による事例検討会およびグループケアの取り組みを実施した。事例については、「レビー小体型認知症の疑いのある80歳女性のケース」、「入浴・整容を拒否する80歳男性アルツハイマー型認知症のケース」、「金銭的不安の訴えが多く、安定した生活の送れない82歳女性アルツハイマー型認知症のケース」、「帰宅願望、昼夜逆転、興奮、徘徊などの心理・行動症状(BPSD)が顕著な85歳女性未診断認知症のケース」の4事例について検討し、介護職員とともに事例に基づく学習を行った。グループケアの取り組みでは、種々のアクティビティを実施し、表情、集中度、発話、自主性についてチェック式の記録を行い、参加者の個別分析を行った。これらの取り組みについては今後も継続して事例と取り組み例を蓄積し、介護職員の資質向上への効果を検討していく予定である。 高齢者施設での看取り経験に関連する介護職員と家族への質問紙調査を通じて、両者の問題意識や達成感の違いを検討し、報告書にまとめた。今後も研究を継続し、介護職員の看取りケア効力感の向上を図りたい。 その他の研究計画については昨年度までにおおむね終了していたため、その成果について2編の学術論文(「高齢者のケアと行動科学」、「生老病死の行動科学」)、3件の学会発表(IAGGアジア/オセアニア老年学会議、日本心理学会、日本老年行動科学会)、1冊の報告書、3編の書籍として発表した。主な成果としては、介護職員の認知症に関する形式知測定検査結果に関わる要因の検討、介護職員の有能感と仕事への内発的動機づけ、特別養護老人ホームにおける看取りプログラムの評価等であった。
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